江戸時代、城下町として栄えた佐倉市で七福神巡りをした。幸福をもたらすと言われる民間信仰の七福神。一般に恵比寿、大黒天、毘沙門天、弁財天、福禄寿、布袋尊をいう。
佐倉市観光協会でいただいた地図を手に歩いた。始めに同市新町にある宗圓寺(臨済宗)からスタート。左側に赤地に白文字で寿老人という幟が見え、対面。「不老不死の霊薬を所有、人々の健康と長寿の神様として、広く崇敬されている」。掲示板の説明を読むと、健康寿命は昨今の課題でもあり切実だ。
すぐ向かいにあるのが嶺南寺(曹洞宗)。弁財天を探した。石面に彫られた姿に意表を突かれる。
三つめは甚大寺(天台宗)。本堂の屋根の朱塗の縁取りがモダンアートのよう。ここで毘沙門天と対面。病魔退散、財宝来福の神。
次は検察庁横の松林寺(浄土宗)へ向かった。毘沙門天は非公開。佐倉城を築いた土井利勝が創建。境内で父母夫人の供養塔を見つけた。苔むした三基の塔の前で400年の時を思う。
昼食を取るため、蕎麦屋の川瀬屋に入る。天保元年(1830)創業の風格ある店内で天重せいろをいただく。腹も心も満たされ、温まる。
食後、すぐ隣に「花・ゆめガーデン」の看板とバラの庭と山小屋風のショップが目に入った。オーナーの伊藤雅通さんは「退職後にバラの庭作りを始め、自由に見学出来るようにした」と。
花と共に暮らす幸福な人生だ。
しばらく歩き、妙隆寺(日蓮宗)に到着。大黒天は非公開。入口の山門までの道は綺麗な一本道だ。境内には保存樹が生い茂り、静寂が支配していた。
寺を後にして裏通りを歩くと佐倉市立美術館の南側に出た。館内では女子美術大学日本画展が開催されていた。「鰐地獄」という作品がおもしろかった。同大学と佐倉市は古くから縁があり、連携協働協定を結んでいる。
美術館を出て、麻賀多神社へ向かった。境内で手水をしていた男性と言葉を交わす。午前中、印旛沼周辺を走って来たという。都内のレストランのシェフをしていて、街歩きも好きらしい。私は境内で福禄寿を見つけた。前に立つと猫が出て来て迎えてくれた。恵比寿はさらに奥にあった。
最後に「くらやみ坂」を通り、大聖院(真言宗)の布袋尊へ。禅僧で、唯一実在した人物。夫婦円満、子授けの神だ。
大聖院前の武家屋敷通りを歩いていると、先ほどのシェフと再会。グリーンの衣服の彼は「ひよどり坂」の方へ行くという。
私は京成佐倉駅へ戻る途中、ワーク・ワークスという古道具と作家作品の店に寄った。12月号で掲載したステンドグラス作家の作品が展示されていた。チーフの石田ゆかりさんが「印西市のギャラリーカフェ風草もおすすめです」と教えてくれた。いつか訪ねよう。
駅近くで古本屋アベイユブックスが開いていた。中へ入るとグリーンウエアの彼の後ろ姿。「また、お会いしましたね」と互いに声を掛け合った。三度お会いしたシェフは料理本を購入していた。私は「フィレンツェ美術散歩」を求めた。都内のレストラン名を聞いた。近いうちに訪ねてみることにしよう。
◆今回の散歩データ。京成佐倉駅~七福神巡り約5㌔、4時間。