藤原道長の書《書の力 第44回》

ふれあい毎日連載

藤原道長 金峯山埋経 紺紙金字法華経安楽行品第十四 平安時代 紺紙金字 14.5×37.8㎝ 一葉 

成田山書道美術館蔵

大河ドラマ「光る君へ」に登場する藤原道長(966-1028)は、摂関時代を代表する貴族、政治家として有名で、権力を待ち、政治をほしいままにした一方で、詩や和歌を好んだ文化人としても知られています。大河ドラマでは人気俳優が道長を演じ、「源氏物語」の作者、紫式部との密かな恋の行方が気になります。

この「金峯山埋経」(きんぷせんまいきょう)は、寛弘4(1007)年に奈良県吉野にある金峯山に埋納した写経の一部で、『法華経』を書写しています。当時、悪性の流行病や内裏焼亡など立て続けに起きる凶事に、道長自ら筆を執りました。下半分が崩れて失われているのは、長いあいだ土中にあったためです。江戸時代に発掘されました。

ゆったりと構えた和様の楷書で、金泥の筆を慎重に運んでいます。道長が、三跡の一人藤原行成にも引けをとらない書き手だったことがこの書からわかります。

※成田山書道美術館は展示場のLED化工事のため休館中です。10月19日にリニューアルオープンします。(学芸員 田村彩華)