書の力 三十三回

ふれあい毎日連載

小山やす子(1924-2019)「伊勢物語屏風」 

平成15年毎日芸術賞 彩箋墨書 六曲一双 各251.0×497.0㎝

伊勢物語屏風 左隻

「伊勢物語屏風」は、平成を代表する仮名作家の一人として活躍した小山やす子(1924-2019)の代表作です。

長年あこがれていた今村紫紅の「熱国之巻(ねっこくのまき)」に着想を得て、小山は自分が書きたいと思う構成の紙を料紙作家の大柳久栄氏に依頼しました。「作品は料紙で決まる」というほど、紙に強いこだわりがあったようです。

右隻は開花直前の梅の折れ枝で、左隻は生の藍で染めた料紙に金銀箔の装飾が施されています。『伊勢物語』は小山が長年にわたって読み込み、幾度となく作品に仕上げてきた題材です。物語の内容に寄り添いながら軽快に筆を走らせます。

写真では伝わりにくいですが、縦250㌢、六曲一双並べると横10㍍にも及ぶ大型屏風。当館の大きな会場に合わせて制作されました。書、題材、料紙、装丁にいたるまで意を凝らし、三年越しで完成した大作です。この作品は平成15年の毎日芸術賞を受賞しました。

伊勢物語屏風 右隻

成田山書道美術館では10月21日から12月17日まで「生誕100年小山やす子展」を開催し、小山やす子の代表作を一堂に展覧します。(学芸員 田村彩華)