書の力 第二十六回

ふれあい毎日連載

【作品】

題雛図(ひなず)

阪 正臣(ばん まさおみ)<1855-1931>

一幅 紙本墨書 131.8×33.3㎝

阪正臣(ばん まさおみ)(1855-1931)は宮内庁内で和歌に関する業務を行う、御歌所(おうたどころ)で歌人として和歌の教育普及に携わりながら、書家としても活動しました。

はじめは王羲之(おうぎし)や貫名菘翁(ぬきな すうおう)の書風を学び、漢字から平安古筆へと書の流れを意識しています。仮名を学ぶ上でも中国の書法を尊重しました。御歌所寄人(※短歌・長歌・唱歌等に関する編纂撰述をする、勅任待遇の名誉職)のなかでも屈指の能書として知られ、「明治天皇御集(ぎょしゅう)」の浄書(じょうしょ※清書すること)を完成させ、女子の手本なども数多く手がけています。

これは雛図を題にした自詠の歌を書写したもので、整った字形で詠みやすく、格調高い作品です。平安朝の古筆を基にして自らの歌を雅やかな書で表現しようとしたのでしょう。3月3日は桃の節句、ひな祭りです。(学芸員・田村彩華)

【釈文】

桃のかほ柳のすかたはるのいろの

いつれおとらぬなつかしさかな 題雛図 正臣

現在、成田山書道美術館では先月ご紹介した「豪彊」を含む尾崎邑鵬先生の作品を一堂に展覧しています。