南山之寿《書の力 第11回》

書の力

西川 寧(やすし)(1902-1989)

南山之寿(『詩経』天保篇より)

成田山書道美術館

激動の一年が終わろうとしています。来たる年に想いを込めて今回は吉祥の作品をご紹介します。

西川寧(やすし)(1902-1989)が書いたこの作は、現在でも実印などに使われることが多い篆(てん)書(しょ)体で書かれ、堂々とした風格とバランス感あふれる書きぶりが印象的です。中国最古の詩集、『詩経(しきょう)』天保篇から南山のことを詠んだ部分を書いています。南山とは西安の南に位置する秦(しん)嶺(れい)山脈の一角、終南山(しゅうなんざん)を指しています。

終南山は古くから不滅、長寿の象徴として信奉されてきました。そのため書のみならず、絵においても縁起の良い画題としてしばしば登場します。ちなみに魔除けとして知られる鍾馗(しょうき)も終南山の出身とされています。良いお年をお迎えください。(学芸員・山﨑 亮)

【釈文】

如南山之寿不騫不崩。乙未。夏夜安叔。

【大意】

南山の存在は永遠で、欠けたり崩れたりすることはないという意。