上位再浮上を睨む柏レイソルにFW垣田裕暉とMF手塚康平という新戦力が加入した。
鹿島アントラーズから加入の垣田は大型FW。空中戦での強さや活動量、即興性の高さなどを加入直後から見せつけていた。印象的だったのは試合中の表情や表現力、無理が利く強い体。加入間もないこともあるのだろうが、受け手に伝わりやすい意思表示。何より、実に幸せそうにプレーする姿に感銘を受けた。
「サッカーは楽しいものですし、試合に出て、ピッチに立つというのはサッカー選手としての最大の喜びですから、『試合を楽しむことができなければ、やっている意味はない』と思っていますよ。今はこのチームの積み上げの中に加わっていけるように励みたいし、チームのやり方を覚えていくことで貢献することで失点を減らし、ゴールを増やせたらと考えています。その中で自分を表現することもやっていきたいです」
ゴール前の最深部から力強いヘディングを叩き込んだ初ゴールにもあったように、垣田の存在はレイソルに今まで見られなかったパスの軌道を生むだろう。速さのマテウス・サヴィオと強さの細谷真大。業師・木下康介に加えて、垣田の高さを手に入れて脅威のレベルを上げた攻撃陣に期待だ。
そして、何より重要なのは垣田も前述した彼らと同じく、「チームプレイヤー」として戦うことができること。時には強い矢印を自らに向けて次へ向かえること。
「ゴールでチームを勝たせられれば一番良いですが、自分は『チームのために働く』という部分を大事にしている。どんなシチュエーションにあっても、自分がその試合で出来る100パーセントを出す。その結果、誰が点を取ってチームが勝てるように持っていきたい」
そんな垣田を活かす側の手塚は横浜FCとサガン鳥栖を経て4年半ぶりのレイソル復帰となった。
繊細なボールタッチに美しいルックアップ。豊富なアイデアで攻撃にリズムとクオリティをもたらせる選手。彼の左足はレイソルにあった「セットプレー」という課題の解決にも一役買うことだろう。
復帰戦となったガンバ大阪戦。中盤でボールを受けた手塚はテンポ良くパスを交換しながら前進。自らFKを獲得したシーンの中には「手塚の4年半」が詰まっていたし、復帰後初のプレーがCKだったのは手塚が背負った宿命だ。
「横浜ではチームでの連携を学んだ。中盤での動き方についても自分が得意とする形以外のアイデアの幅を広げてもらえた。鳥栖では『前へ行くこと』を強く求められていました。ボールへの関わり方、クロスのタイミングの感覚を変えてもらえた。レイソルでの攻撃のイメージはあります。前線の選手たちは強度もあって、能力が高い選手ばかりですから、彼らを活かすことが自分の仕事の一つだと思っていますし、セットプレーでも力になれるはず」
手塚という新たなキャラクターを加えたMF陣の競争が何を生み出すのかについては、G大阪戦で見せた整った陣形からのタイトな守備と丁寧な配球からチャンスを構築した戦い方にヒントがあるように思う。また、シーズンを戦う上でのクオリティやローテーション、その選択肢も増えた。
また、手塚の復帰は多くのサポーターの表情を豊かにして、且つ喉も開かせた。G大阪戦ではどれだけ待望されていたのかが伝わる光景があった。その光景に対し、手塚は少し照れながら感謝を口にした。
「試合前にサポーターが自分の応援歌を歌ってくれていたことはすごくうれしかったです。一度、前十字靱帯の大ケガをして、その後に初めて実戦に戻った時を思い出していました。感動しました」
いずれこの2人の関係だけでゴールを生み出せそうな新加入コンビだが、ちょうどその中間でプレーするマテウス・サヴィオは新しい2人についてこう話してくれた。
「カキはこの夏に加入してからしばらく経つし、すぐにゴールを決めて、『結果』という形で彼が持っている能力を証明した上で、この中断期間も有効に活用していたと思うよ。お互いの特長を共有できて、連携も深められたからね。康平のクオリティに関しては私がここで何か語る必要はないよ。私は2019年から手塚康平という選手を知っている。とても優れた感覚を持っている選手だと知っている。2人とも必ずチームの力になってくれるはずさ」
煌めく何かが必要ならば、レイソルはそうしたはずだし、こだわったはずだが、レイソルが望んだのは「足りないところを補って、強くすること」を担ってくれる選手たち。そう、まさに「補強」だ。
陣容は整備されている。求める戦い方の輪郭も見えてきた。きっと、うまくいく。
(写真・文=神宮克典)