10月6日、柏レイソルは育成組織・柏U‐18に所属するDF田中隼人、FW真家英嵩、FW升掛友護の来季トップチーム昇格を発表した。
その期待の3選手の中でも唯一トップチームでの出場経験を持つのが田中選手。現在は柏U‐18チームで奮闘している。昇格発表直後に行われた清水エスパルスユースとの一戦でもフル出場を果たした。
「来季のトップチーム昇格が発表されてから最初の試合ですし、色んな人たちから注目してもらえるかもしれない試合だという自覚は自分の中にありました。どんな状況でもカバーリングやキックの種類など、攻守における能力を常に発揮する必要を感じています。それができればプロの世界でもやっていけると感じています」
今春に第2種登録された田中選手はルヴァン杯の3試合に出場。プロ選手たちが鎬を削るステージにおいても、3CBの一角として見せたその実力の片鱗に期待を寄せたサポーターも多いのではないだろうか。田中選手はトップチームでのプレーの中から持ち帰ってきたものをこう話した。
「ルヴァン杯でプレー機会を得ることができましたが、自分は上背があるのにも関わらずヘディングでの迫力が足りないところや、守備での距離感をもっと改善していかなければと感じていました。井原正巳コーチや松原直哉コーチ、北爪健吾さんからも同様のアドバイスをもらいましたし、Uー18チームへ戻ってからも継続して向かい合っている課題です。実戦の中で徐々に修正できている手応えがあります。これを続けていきたいです」
188㌢という恵まれた体格の左利きCB。同じ左利きの優れたDFを数々輩出してきたレイソルアカデミーならではの「系譜」にある選手といえる。
それゆえ、中山雄太選手(ズウォレ)や古賀太陽選手たちになぞらえて語られるケースも少なくない。「自分はうれしいですね」と田中選手はこんな話をしてくれた。
「まだアカデミーに入る前に、出身クラブ(ミナトSC)の先輩である浮田健誠くん(山口)を見るために日立台で柏U‐18の試合を観戦しました。そこで中山選手のロングパスを見て以来、中山選手はずっと自分の憧れの選手です。だから中山選手や、アカデミーの先輩である太陽くんと比較されたりすることは嬉しいです」
語り口はやや静かながらも、大きな瞳を輝かせ「系譜」を継ぐことに貪欲な意志を示す田中選手は、今後の自分の野望をこのように言葉にした。
「U‐15の頃からトップチーム入りを夢見て努力をしてきましたから、今回昇格が叶って嬉しいです。ただ昇格するだけではなく、プロの世界で活躍して日本代表選手になってW杯で活躍する。自分にはそんな大きな夢があります。来年は『1年目の選手』となるわけですけど、『試合に絡んでいくんだ』と決意しているので、時間はあまりないかもしれないですけど、今後も自分自身を追い詰めながらやっていきたいです」
常時選出されている年代別日本代表としても将来を嘱望されている田中選手。先駆者たちが残してきた足跡をたどるだけでなく、クラブの価値を引き上げるかもしれない彼の可能性に期待したい。
(写真・文=神宮克典)