『レイソルしま専科』は自分なりの恩返し ―杉井 颯

レイソルコラム

 柏レイソルが「サッカーを通じてホームタウンの子どもたちの健全な育成に寄与すること」を目的に、2006年から実施している学校訪問プロジェクト「レイソルしま専科」。

 2019年も柏レイソルホームタウン内の小中学校を巡った。訪れた学校数は12校に及んだ。

 選手たちは現在の「プロサッカー選手」になるまでの経験談などを伝えるだけでなく、ボールを用いたレクリエーションを通して心を通わせ合う。最初は選手たちとの距離感を感じさせる子どもたちだが、会が終わる頃には心の距離を狭める。子どもたちとの交流の中で選手たちも普段とはまた別の姿を見せる。

 この「しま専科」ツアーの中で目立ったのは杉井颯選手の活躍。杉井選手は、実に4校を訪問した。流山市立西初石中学校と柏市立土中学校では「1人舞台」も経験した。

 「『プロサッカー選手』という夢を叶えた時に、『試合で活躍してチームの勝利に貢献する』という目標ができた。それと同時に『ホームタウンや故郷・流山市に恩返しをしたい』という思いがあり、早い段階からクラブにも打診をしていたんです。幸いにも自分を育ててくれた先生からの依頼もあり、4校となりました。もっと行きたいんですけどね」

 やんちゃの限りを尽くしていた少年時代の杉井選手を立て直したのは教師たちの愛情とサッカーというスポーツ。そして、家族や教師たちに誓った「サッカー選手」という夢だった。いずれ出会う人生の夢と真剣に向き合ってみよう。杉井選手はそう生徒たちに語りかける。

 「授業の邪魔をしたりふざけたり…どうしようもない子どもでした。でも、先生たちに胸の内を打ち明けるうちに沢山のことが解決して、その日から『サッカー選手』という目標ができた。生徒さんたちと年齢が近い自分の言葉はまた他の先輩たちとは違った届き方をするはずですから、なるべく等身大の表現を心掛けました。今回の経験を機に自分もまた成長できたと感じていますし、今後も自分なりに伝えていけたら」

 これまでの人生経験は杉井選手なりの方法で伝えることができた。今後も伝え続けてゆくには自ずと新たなチャプターが必要になる。杉井選手はそのことを分かっていた。

 「自分もまた経験や実力を持った選手になれば、もっとダイレクトに伝えることができるので、選手として成長しなくてはいけませんね。またその途中の経験も話せるでしょうし。『杉井は試合で見ないけど、学校訪問ばかりしている』って言われないようにがんばらないと。そういう緊張感もありますね(笑)」

 杉井選手が語ることになる次のチャプターはどのような内容になるのか興味深い。

(写真・文=神宮克典)