心優しきフェノメノ クリスティアーノ・ダ・シルヴァ

レイソルコラム

 柏レイソルが2019年J2リーグ優勝と、来季のJ1昇格を決めた町田ゼルビア戦(11月17日・町田)。5分と59分にゴールを決めて勝利に大きく貢献したクリスティアーノ選手は、「ヤッターッ!」と日本語で喜びを表現した。クリスティアーノ選手にとってはようやく手にした初タイトルだった。

 「今は充実感や幸福感に包まれているよ!だってそうだろう?『J1へ』というチームの目標を達成できたんだから。自分たちに託された大きな使命を果たせたことが何よりもうれしいんだ」

 ここに至るまで、幾度となく大陸側からもオファーが届いたというが強い思いでレイソルに残留。2016年には契約上の問題で古巣・甲府へ戻ったが、2ndステージには「この街とレイソルのサポーターを愛している」とレイソルに復帰したこともある。昨年末のJ2降格時も真っ先に「レイソルへ残り、絶対にJ1へ帰る」と決断しサポーターを喜ばせた。試合後には誰よりも先に迷いなく歓喜に沸くサポーター席へ飛び込み、彼のレイソルへの溢れんばかりの特別な愛着と喜びをストレートに表現した。

 「常にサッカーという競技を愛し、常にプレーする喜びを持って取り組んできたことに対して、神様から祝福を受けた。そのプレゼントとして、今日の2つのゴールをサポーターと分かち合えたと思っているんだ。もちろん、自分にボールを託してくれた仲間たちへの感謝も忘れてはいないよ」

 ブラジルとオーストリア、そして日本でのプレー経験の中で酸いも甘いも知り尽くした32歳の現在、ネルシーニョ監督との出会いがクリスティアーノ選手の本能を刺激したという。これまで以上のプレー強度を求めるネルシーニョ監督のサッカーとの相性は抜群で、今季はゴールとアシストを量産、その活躍ぶりはまさに「フェノメノ(怪物)」だった。

 「ネルシーニョ監督という人は『究極の勝者』だよ。勝つために必要なことを知っているんだ。日本やブラジルでのキャリアがそれを証明しているだけでなく、とても賢い人で、マインドがオープンな人でもあるから、常に自分たちを気に掛けて助けてくれていた。監督との仕事を始めてからこんなことを思ったんだ。『必ずネルシーニョ監督の下で成功したい』って。監督は昨年の良くない流れから良い方向へ立て直すことに全力を注いでくれた。充実したシーズンを過ごせたのは監督の存在が大きい。その人のために『最高の結果』を掴むことができたのは選手として本当に幸せさ」

 来季はレイソルの「還るべき場所」、J1リーグでの戦いが待っている。クリスティアーノ選手は何を目標に戦うのだろうか。

 「それは『タイトル』、それ以外にないよ。レイソルに来てからJ1リーグのタイトル争いだって経験した。ACLでの戦いもたくさん経験できた。レイソルは常にそうあらなくては。このJ2での1年という時間が、レイソルの持つ『輝かしい歴史』を覆い隠してしまうことはない。来年はそれにふさわしい結果が求められるはずさ。レイソルは常に高い目標と向き合うべきクラブ。もう今からJ1の戦いが楽しみでしょうがないんだよ」

 心優しき「フェノメノ」はすでにファイティングポーズをとっていた。クリスティアーノ・ダ・シルヴァ、やはり「怪物」だった。

(写真・文=神宮克典)