勝利の使者 また1人 マテウス・サヴィオ

レイソルコラム

 このクオリティを持つ選手にはなかなかお目にかかれない。マテウス・サヴィオ選手のプレーを見るたび、そう思わされる。

 一度彼のプレーを見れば、鮮やかなテクニックやスピード、得点力の秀逸さがすぐにわかるだろう。これまで多くの外国人選手が口を揃えて「スピードが速い」と形容するJリーグ。そこに短時間で適応できた理由をサヴィオ選手はこう語る。

 「ただ短いパスを出してボールを繋ぐだけではなくて、仲間や相手の陣形を確認しながら状況を見極めて、適切なパスを出したいと思うし、『ボールを持ったら仕掛けること』を常に頭に置いているんだ。自分はそういう選手。だから、MFでもFWでも適応できる」

 その言葉の通り、江坂任選手、瀬川祐輔選手、クリスティアーノ選手、オルンガ選手ら攻撃陣とすでにプレーイメージを共有し、見る者の目を楽しませている。その姿はさながら「勝利の使者」だ。しかし、サヴィオ選手の姿勢に油断はない。

 「Jリーグはリーグ自体に競争力があって、相手チームのクオリティやプレー強度の高さを感じる。様々な試合を見て思ったのは、各クラブが『状況を変えられる選手』を擁していること。レイソルにおいては自分もそのような仕事を求められるはずだから、1日も早く適応できるよう、来日前に体を作ってレイソルへ合流したし、外国人選手同士の競争もあるから、クラブの力となれるようこれからも日々のトレーニングに臨むことが大事になるね」

 22歳の若さでありながら、プレーや振る舞いにも高い知性を感じさせるサヴィオ選手。彼がシンパシーを抱く選手を聞いてみると迷いなく2人の選手の名前を挙げてくれた。

 「僕の憧れはアンドレス・イニエスタ(神戸)なんだ。FCバルセロナやスペイン代表で彼が残した足跡や活躍、プレーの数々に憧れていたし、いつも影響を受けてきたんだ。レイソルの素晴らしい選手たちの中では、最も尊敬しているのはタニ(大谷秀和選手)。彼は常にチームを良い方向へ導くことができる人間性を持っているし、もちろん攻守においてプレーも素晴らしい。タニの存在はピッチの中でも外でも特別なものがある。彼はボランチで僕は攻撃的な選手だから求められる仕事は異なるけれど、僕は攻撃的なプレーで、タニのようにレイソルの力になりたいと思っているよ」

 彼のような選手にはなかなかお目にかかれない。その確かな目や知性でレイソルに何かを残してくれるはずだ。

 (写真・文=神宮克典)