川口尚紀が胸に誓う再浮上

レイソルコラム

 「悔しいですよ…悔しいの一言です」川口尚紀選手は気持ちを鎮めるようにそう話した。

 7月末日にアルビレックス新潟から柏レイソルに期限付き加入が発表され、翌週には日立台のピッチで右SBとしてスタメン出場。その起用法から「私たちは今回の加入以前から彼のプレーをずっと追っていた」というネルシーニョ監督の高い期待がうかがえた。

 自身も新しい環境でのプレーをポジティブに捉え過ごしていた。チームも連勝街道の真っ只中。ぶっつけ本番で臨んだレイソルデビュー以降、特長であるスプリント能力や攻撃参加を随所に披露。すべては順調に進んでいるように映っていた。

 潮目が変わってしまったのは8月25日のFC岐阜戦。相手選手のファウルにより受傷し退場。幸い軽傷であったが、次戦からは田中陸選手が代役に抜擢され、猛暑が去る頃には本来はFWの瀬川祐輔選手が右SBを務めていた。

 「岐阜戦での出来が悪かったとは思っていないですが、その後に離脱したことで状況が変わってしまった。ちょうどあの時は右サイドの大外のレーンを使って攻撃的にプレーする自分の特長を理解してもらって、プレーできていた時だった」

 どんな形であれ、以前より、ピッチは遠のいた。だが、その中で川口選手の悔しさの成分を問うと、次の言葉に謙虚な人間性が映し出されてきた。

 「本職の右SBである自分がプレーをできてさえいれば、瀬川くんは本来の攻撃的なポジションでプレーすることができるわけですからね。連勝中、中盤で瀬川くんは明らかに効いていた。自分がSBに戻れば、そういう意味でもチームにとっても良い影響を出せるはずだから、悔しかった」

 J1復帰へ向けたJ2リーグも終盤戦。チームは首位を堅持したままだが、ネルシーニョ監督はチーム内に高水準の競争を発生させながら、選手たちを刺激する。川口選手も日々の緊張感のある練習の中から得た自信を胸に再浮上を誓う。

 「今の戦術は攻守においてSBが担う役割が大きい。SBとしては攻撃に厚みを出しやすいので、そこでチームの力になりたいと思います。終盤戦に向けては積み重ねが物を言うし、実力と順位が伴うチーム状態だと思うので、自信を持って戦うことは変わらない。上位陣との対戦もありますが、ブレずに戦い結果に繋げ、チームも自分も成長を続けていきたい」

 長かった戦いの最後、第4コーナーに差し掛かる今、チームがこのままゴールテープを切るためには、このような謙虚な選手の存在が物を言うシナリオは悪くない。

(写真・文=神宮克典)