1月9日、長野県の情報拠点 銀座NAGANOで「信州の昆虫食~おいしく・たのしく昆虫食の魅力発信~」が開催された。
長野県の白馬村出身で、アマゾンの料理人とも称される太田哲雄シェフに、昆虫食についてたっぷりと聞けるスペシャルなイベント。
19歳でイタリアに渡り、その後スペインやペルーで食文化を学んだ。ペルーの国土は日本の約3倍で、半分がアマゾン原生林。現地に住む人の食生活は「生きるために自分たちで採ったものだけを食べる」というもの。
塩も調味料もハーブも無い中、野草をすりつぶしたり、レモングラスの香りがするアリを調味料として魚にかけたり、カカオと昆虫をペースト状にしてデミグラスソースのように肉にかけて食べていることを知った。
幼少の頃からイナゴやハチを食べていた太田シェフは、祖母から「虫を食べるのは、戦後、食料がない中で知恵を絞った結果」と教えられた。長野の食の歴史はアマゾンと似ていると感じたそう。
「世界的に食糧危機が迫りくる中、日本は自給率が低いのに食品ロス率が高すぎることが問題。シェフとして、ただ美味しいものを提供するだけでなく、食物連鎖や食の未来についても考えている」と話す太田シェフは、信濃毎日新聞社とタッグを組み昆虫みらいプロジェクトを展開。
このプロジェクトは生の魚を食べる習慣がなかった世界の人々が、今では「健康的でおいしい!」と大人気になったお寿司のように、世界中で、体に良くておいしいから選ばれる、未来にむけた昆虫食の新しいスタンダードを目指しているものだ。
「お話を頂いた時に、まず『険しい道』だと伝えました。しかし、信州のことだけでなく、正しい食の現状を伝えられる信濃毎日さんと一緒に、未来の子どもたちに食をどう残していけるかを考えたいと思った。まずはゲテモノ扱いされがちな昆虫を、きちんと『美味しい』に落とし込むことで、コンセプトに共感してくれる人が増え、自分たちの食文化を見直してもらうきっかけになれば」。
共同開発による昆虫食のブランド「PICO SALVATORE」では、信州産の昆虫食材にとことんこだわったチョコレートやクッキーなどを販売している。世界最高峰レストランとして名を馳せたスペイン「エル・ブジ」出身で、「サロン・デュ・ショコラ」常連の太田シェフが考案するお菓子は、昆虫食のイメージを一新するおいしさ。ぜひ一度味わってみて欲しい。
(取材・文=松原美穂子)