みなさんのお宅に畳の床はあるだろうか。
畳の歴史は約1300年続いており、江戸時代前は、客人をもてなす部屋に使われる高級品だった。江戸時代あたりから庶民にも普及し始め、明治時代から畳屋の数も増え、高度経済成長期に一般家庭に普及した。
我孫子市にある成島畳店は、明治33年創業、今年で120年目を迎える老舗の畳店だ。
創業当時は、浅草の料亭を得意先とし、東京都本所区(現墨田区両国)に店を構え、職人を多く抱えていた。現在も成島畳店から独立した職人たちが、自分の店を出している。現代の住宅事情では、欧米化の流れもあり床に座っていた人々の生活が、椅子の生活へと変化していった。そんな中、特許を取った成島畳店の衝撃緩和型畳が、令和元年の「千葉県ものづくり認定製品」として注目されている。
その畳は、重さ6キロ(通常の畳は20キロ)という軽さ。その理由は、中心部に空気の層を成すコルゲート板(波板)という緩衝材を入れ、それを断熱材でサンドイッチしているからだ。
4代目の成島康夫社長は、「床に転倒した時に受ける衝撃の大きさ(G値)などを20年研究されている東京工業大学の横山教授に試験を行ってもらいました。細かいデーターで畳の軽さと転倒衝撃時のけが損傷リスクを算出しました」と語る。
現代の高齢化社会では、家で転倒して歩行困難になる人が増えているが、衝撃緩和型畳は、クッション性が高く表面が滑りにくく歩きやすい。介護保険適用対象品なので、住宅改装でも導入しやすい価格となる。
フローリングと比較すると、ハウスダストの舞い上がりが、わずか10分の1という少なさにも注目が集まっている。ハイハイをする赤ちゃんから小さな子どもたちにとっても安心な畳といえるだろう。表面のイ草は、熊本産の有機栽培のイ草を使用している。また、軽さと性質により水に浮く「浮き畳」としても注目されており、水害時の避難のボート替わりとしても期待されている。
現在では、社長含め3人で畳店を経営しているが、高性能の機械をいち早く取り入れるなど生産性の効率化を図っている。
畳の手入れ方法は、ホウキ、または掃除機で表面のホコリを取り、水に湿らせた固く絞った雑巾で拭いた後に、乾拭きをする。汚れが目立ってきたらエタノールなどのアルコールで軽く拭くのがいいそうだ。手触りや感触のいい畳をもう一度見直してみるのはどうだろうか。
(取材・文=高井さつき/写真=高井信成)
■成島畳店 我孫子市寿1‐17‐12☎04・7182・1515