特発性正常圧水頭症

名戸ヶ谷病院 脳卒中センター
名戸ヶ谷病院 脳卒中センター・センター長 脳神経外科部長 井上 靖章

 脳卒中など身近な脳の病気について連載しているこの企画、今回は特発性正常圧水頭症という疾患についてお話します。

 身近な高齢者で、最近足がおぼつかず転びやすくなった方はいませんか。

 実はその原因は脳にあるかもしれません。『歩行障害』『排尿障害』『認知機能低下』の3つの症状が特徴的なこの特発性正常圧水頭症は、65歳以上の高齢者に1.5~2.3%ほどいると推定されており、非常に身近な病気です。

 初期症状は歩行障害であることが多く、両足を左右に広げてゆっくり歩く様子が特徴的です。この疾患を多く治療している我々は、歩き方を見るだけでこの病気を疑うことができるくらいに特徴的と言えます。

 その他にも、物忘れがひどくなったり、おしっこが頻回で我慢できなくなったりするという症状もあります。

 原因ははっきりとは解明されていませんが、CT・MRIなどの画像検査では、脳や脊髄を満たしている脳脊髄液という体液が溜まりすぎている所見がみられ、この脳脊髄液を身体の他の空間に逃がす『シャント手術』というものを行えば症状が改善することが多いです。

 歩きにくくなることにより、トイレに間に合わず失敗する。どこか認知症みたいになってしまっている。そうやって辛い生活をしている高齢者の方にシャント手術を行うと、ご本人さんはもちろんのこと、介護を行っているご家族の皆さんにも喜んでいただいております。

 特発性正常圧水頭症が疑わしいかどうかは、CTやMRIの画像検査で判別可能で、1泊入院する検査を行えば診断が可能です。手術も経験豊富な我々のような施設では局所麻酔で20分前後の簡単なものですむことも多いです。

 何か疑わしい症状があるご高齢者がいらっしゃったら、ぜひ一度専門外来を受診してみてください。

社会医療法人社団蛍水会 名戸ヶ谷病院脳卒中センター(新柏駅から徒歩約7分)
☎04・7167・8336