全力なのは現役だけじゃない!
2023年の夏
夏の甲子園では熱い試合とともにアルプススタンドを埋め尽くす大応援団が連日ニュースになっていました。まるでコロナ禍で出来なかった分を全てぶつけるようなエネルギーに、青春に掛ける想いを感じ、心が揺さぶられました。
「昨夏」の甲子園を制した仙台育英学園高等学校の監督さんの言葉にも「“青春ってすごく密”なので。でも、そういうことは全部、『駄目だ、駄目だ』と言われて、活動をしていてもどこかでストップがかかって、どこかでいつも止まってしまうような苦しい中で、でも本当にあきらめないでやってくれたこと。でも、それをさせてくれたのは、ぼくたちだけじゃなくて、やっぱり全国の高校生のみんなが、本当によくやってくれて、(中略)ぜひ全国の高校生に拍手してもらえたらなと思います」とあるように、本当に辛抱強く日々を過ごしてきた三年間でした。そしてそれを取り戻すかのようなこの夏です。
甲子園だけでなく様々な行事や部活動の合宿も制限のない夏となってきています。そして、そこにはOBたちの姿があり、後輩たちのために汗を流して行事や合宿の運営を手伝ってくれています。伝統的な姿にも映りますが、先述のように行事は、実は彼ら自身の多くは経験できなかった青春の一ページなのです。
「今しかできないんだから、一生懸命にやって欲しい」「僕たちの分まで、とは言わないけれど当たり前に仲間と合宿できることに対して感謝の気持ちを忘れないで欲しい」「色々な人の努力と支えがあって今できているのだから」。
後輩たちを前に語り掛けるOBたちの言葉には、苦しい時間を越えてきた強さとともに、輝く時間を生きる後輩に対する叱咤激励がにじみます。グラウンドで後輩たちよりも生き生きと、喜びを顔にも背中にも溢れさせながら声を出すOBの姿に、後輩たちも負けじと声を張り、久しぶりの全力の夏が過ぎていきます。
■K太せんせい
現役教師。教育現場のありのままを伝え、読書案内なども執筆する。