暑さも落ち着き、空気感も変わり秋を感じる日々ですね。今日ご紹介するのは、日本が誇る伝統工芸である津軽塗、通称“バカ塗り”が繋ぐ父娘の絆―『バカ塗りの娘』。
津軽塗職人を目指す引っ込み思案の娘・美也子と寡黙な職人父・清史郎。仕事を優先した父、愛想を尽かして家を出た母、家業を継がず美容師として自由に生きる兄…。バラバラになった家族が、美也子のある大きな決断によって再び共に生きていくようになる作品です。四季折々の風景や日本文化の魅力、食材と料理、その一つ一つもこの映画では描かれています。
タイトルの“バカ”に込められた思いは、津軽塗のことを指す言葉でもあり、完成までに四十八工程あり、バカに塗って、バカに手間暇かけて、バカに丈夫と言われるほど “塗っては研ぐ”を繰り返す完成までの工程の苦労を丁寧に映し出しています。生きること、仕事をすること、塗り重ねられた津軽塗のように、人も変わり新しくなっていく。秋の季節の美しさを感じながら、見ていただけたら幸いです。
(鮑愛)