DRリポート232

ふれあい毎日連載

こどもの矯正治療と口腔機能について

            日大松戸歯学部教授 根岸慎一先生(歯科矯正学)

日大松戸歯学部教授 根岸慎一先生(歯科矯正学)

歯科矯正治療は小児矯正(Ⅰ期)治療と成人矯正(Ⅱ期)治療に分かれます。中でもⅠ期治療は、小学校低学年~高学年に行われる治療となります。この時期は混合歯列期と呼ばれ、乳歯から永久歯への生え変わりが盛んな時期で咬み合わせが一時的に不安定となります。また顎の成長が盛んな時期でもあるため、上下のあごの骨の成長の確認や歯の生え変わりのコントロールが主な治療目的となります。

小児矯正(Ⅰ期)の治療内容

一般的なワイヤー治療ではなく、取り外し式の装置を使用することが多いのが特徴です。

まずご紹介するのは「拡大床」と呼ばれる装置です(写真1)。これは歯列の幅が狭い場合、適切なサイズまで成長を促して歯列の大きさを拡大することで永久歯の生えるスペースを増やすというものです。

写真1 歯列を側方に拡大する装置と治療例

乳歯より永久歯の方が、歯が大きいため、乳歯列の時に歯並びが綺麗でも生え変わりにより並ばなくなってしまう場合もあります。

「機能的矯正装置」

次にご紹介するのは、「機能的矯正装置」というもので、口のまわりの筋肉の機能を利用して顎や歯並びの異常、成長の遅れを改善する目的で使用します(写真2)。

歯並びはお口まわりの悪い癖とも関係していることが多く、習慣的な指しゃぶりや舌などを咬んだりすることでも不正咬合の原因となっている場合があります。

中でも無意識に起こる「舌癖」は、大人になってからでは治しにくい悪い癖で、早い段階で治すことで安定した咬み合わせを得られる場合があります。

写真2

特に反対咬合は早期に治すことが求められる状態で、学校検診などでは必ずチェックが付きます。また、「口呼吸(お口ぽかん)」も歯並びにとっては良くない状態です。呼吸は本来であれば鼻で行うことが正常で、口で呼吸をしていると口周りの筋肉が緩み歯や顎に適切な圧力がかからなくなり、歯並びや噛み合わせの異常を引き起こします。

よって、鼻呼吸への移行を自然に行うことを補助するような治療が必要となります。これらを治療するため、「機能的矯正装置」が使われることがあります。治療期間としては、成長や生え変わりの経過を追っていくため、長期にわたって通院しなければならないこともあります。

Ⅰ期治療の必要性

残念ながらⅠ期治療を行ったからと言って歯列、咬合が完璧に治るわけではないため、Ⅱ期治療を回避できるというわけではありません。しかしⅠ期治療を行うことで、極端に悪い歯並びになることを予防したり、Ⅱ期治療においての治療内容を軽減できる可能性があるため、永久歯をきれいに並べるための準備だといえます。

当院の矯正歯科では予約不要で矯正相談を承っております。小学校低学年のお子さんがいらっしゃるご家族の方は、ぜひ一度ご相談されてみてはいかがでしょうか。 

■日本大学松戸歯学部付属病院☏047・360・7111(コールセンター)