DRリポート223

ふれあい毎日連載

口腔機能発達不全症をご存知ですか?

日本大学松戸歯学部 障害者歯科学講座 教授 野本たかと先生

日本大学松戸歯学部 障害者歯科学講座 講師 林 佐智代先生

野本 たかと教授
林 佐智代講師

皆様の周りに0歳から18歳までの子どもで、明らかな原因となる障害や疾患がないにもかかわらず「哺乳に時間がかかる」、「離乳食が上手に進まない」、「上手にかむことや飲み込むことができない」、「飲み込む時に舌がでる」、「食事をボロボロとこぼしたり、口の周りが汚れる」、「いつも口を開けていている」、「よだれが垂れる」、「言葉が不鮮明で会話が聞き取りにくい」、「睡眠中のいびきがひどい」などの口に関わる困りごとをお持ちの方はいませんか。

口腔機能不全による影響

口腔の機能は、口唇・舌・頬を上手に動かすことによって口腔内を清潔に保ち、虫歯や歯周病の予防となったり、歯並びを整える役割があります。また、十分に咀嚼することにより消化を促し、成長発育に必要な栄養が十分に摂取することができ、味わうことで心身ともに健やかな成長を促すことができます。

口腔に機能不全がある場合、これらに影響をおよぼし、「健康」を阻害する要因となります。さらに、このような子どもたちが成人する時には高齢者におけるオーラルフレイルの予備軍となる可能性があるとされています。つまり、生涯にわたって健康であるためには、子どもの時に健やかな口腔機能を獲得することが重要と言えます。

発達期の口腔の機能不全は哺乳や離乳食をすすめる上で,口腔機能の発達段階に適していない食物を摂取することで口唇・舌・頬などが対応できずに咀嚼や飲み込みができない,舌小帯の肥厚、顎の大きさや歯並び、喉の構造などの器官の問題、さらには口呼吸が有意になり舌が動かせないことなども原因となります。

また、これらの原因に加え、食事内容に偏りがある、会話が少ないなどの子どもを取り巻く環境因子によっても口腔の機能不全が生じる場合があります。これらの口腔機能の発達に関連する様々な不全を「口腔機能発達不全症」と呼び、平成30年から保険診療が可能となりました。

口腔機能発達不全症の治療

日本大学松戸歯学部付属病院では、令和3年より子どもの口の発達外来を開設しました。小児歯科、矯正歯科、特殊歯科などの子どもの口腔機能に専門的知識・技術・態度を有する歯科医師が子どもたちの口の発達を包括的に促すお手伝いをしています。

診察では、日常生活における食事内容やタイミング、食べ方、遊び方や睡眠、姿勢、成長発育状態などについて時間をかけてお話を伺い、口腔内診査や口腔内写真の撮影などを用いて口腔機能発達不全の原因を検討します。これらの結果に基づき自宅で行うトレーニングや環境改善の治療方針を立案します。

 口腔の機能発達が気になる方がいらしたら、「子どもの口の発達外来」にご相談ください。

■日本大学松戸歯学部付属病院 「子どもの口の発達外来」 ☏047・360・9661