『行き止まりの世界に生まれて』

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 今回は、アメリカの小さな町で必死にもがく若者3人の12年間を記録したドキュメンタリー『行き止まりの世界に生まれて』をご紹介いたします。

 「アメリカで最も惨めな町」イリノイ州ロックフォードに暮らすキアー、ザック、ビンの3人。貧しく暴力的な家庭で育った彼らはスケートボードに熱中していく。スケートで繋がる仲間は彼らにとってもう一つの家族、そしてただ一つの居場所だった。

 そんな彼らも大人になるにつれ、少しずつそれぞれの道を歩んでいく。低賃金の仕事を始めたキアー、父親になったザック、そして映画監督になったビン。幼い頃からスケートビデオを撮りためてきたビンのカメラは、一見明るい3人の悲惨な過去や葛藤、思わぬ一面を浮かび上がらせていく…。

 本作は、サンダンス映画祭ブレイクスルーフィルムメイキング賞を皮切りに、国内外で59もの賞を受賞し話題となった作品です。3人のスケボー少年が大人になるまでを捉えた12年間の軌跡は、彼らの人生を淡々と映すだけでなく、現代アメリカが抱える数多の問題を浮き彫りにしていきます。

 大統領選挙や人種差別デモなど、大々的に報じられるニュースの陰で、人知れず苦しむリアルなアメリカの若者を描いた秀作です。           

(新井貴淑)