文学の窓〈日本近代文学館〉

K太せんせいの「放課後の黒板消し」

放課後の黒板消し87

 東京大学駒場キャンパス(教養学部)のお隣、旧前田侯爵邸洋館を囲む木立の端に、日本近代文学館は悠然と建っています。文学館に収蔵されている資料は図書や雑誌を中心に、多くの名作の原稿も含め、実に120万点を誇り、2007年には成田市に分館を建設するに到りました。

その成り立ちには「日本の近代文学は、明治以降、海外から押し寄せる新しい思潮や古くからの伝統がせめぎあう中で、また、関東大震災や戦禍、言論弾圧など数々の苦難をこえて、発展してきました」と書かれています。

特に、敗戦から復興し目覚ましい経済成長に向かう激動の時代の中で、文学館は散逸しつつあった文学的な資料を集め保管するという重要な役割を果たしてきました。さらに、文学館はそれら資料の保管にとどまらず、閲覧室や展示室において、書籍や電子媒体として公開し続けてきました。

また、専門家や大学教授といった研究者を招いて各種の講座や講演会を開催するなど、一般の読書家から現役学校教員まで、広く様々な要請に応えることも大事な存在意義だといえます。単なる資料館や倉庫にしてしまってはもったいない!のです。

さて、日本近代文学館には名誉館長が存在し、初代は『雪国』を生み出したノーベル文学賞受賞者、川端康成が務めました。その後には『しろばんば』や『天平の甍』の井上靖も名を連ねます。

2011年に公益財団法人の認定を受けた日本近代文学館。「近代文学に関する総合資料館、専門図書館として、文学資料の収集・保存・公開と文芸・文化の普及・発展のために活動しています」の宣言通り、この夏にも面白そうなセミナーが開かれます。テーマは『山月記』。作者の中島敦は近年、文豪をモチーフにしたアニメの主人公にもなっていますね。誰しもが教科書で読んだであろう『山月記』の深みを、今一度覗いてみませんか。

■K太せんせい

現役教師。教育現場のありのままを伝え、読書案内なども執筆する。

※写真

日本近代文学館 喫茶室BUNDAN