小暮青風宛書簡 鈴木翠軒筆 一面
紙本墨書 17.9×94.1cm
6月となりましたが、いまだ5月病が抜けきらない方はいらっしゃいませんか。
そんな方にご紹介したい作品があります。この手紙は鈴木翠軒(すいけん)(1889年~1976年)が、弟子の小暮青風(こぐれせいふう)(1911年~1996年)に宛てたものです。
翠軒は本名を春視といい、戦前に国定教科書の手本揮毫(きごう)を任されたほどの人物で、淡墨で流れるように伸びやかに書く書風は「翠軒流」と呼ばれ、多くの人が影響を受けました。この手紙もそんな翠軒の魅力にあふれています。
青風が書家として身を立てることを師に報告した手紙への返信で、翠軒の喜びと期待が見て取れます。師からの激励に発奮した青風は手紙を額装して自室に飾り、見事書家として大成します。青風は市川真間在住の地元ゆかりの書家でもあります。
「一通の手紙が一人の人生を生涯支える」、そのような力が肉筆にはあるのです。
この作品は、成田山書道美術館で5月22日から8月29日まで展示します(休館日除く)。(学芸員・山﨑亮)
【釈文】
お手紙の趣拝承、それはさうなさった方がよろしいと存升。
ソレデ貴兄の一代が光るやうになります。うれしい御報也。喜んでゐます。
又どうぞお遊びにお出で下さいマセ。御令閨様に宜敷。草々不尽。
四月二十五日。春視。
小暮様。御左右。