わたしは拒否する

子どもの広場 ゆうび

 ◇菜ちゃん(小1)のお母さん「菜は食べ物の好き嫌いが激しくて、食べられるものが少ないんです。知らない人や場所も嫌がって、こんなに「イヤ」ばっかりで大丈夫かな…」。子どもには好き嫌いせず、何にでもチャレンジし、もっと世界を広げてほしい。子を想うがあまりの親心です。しかし、拒否すること、拒否できることは子どもが生きる上で大事な力です。


 精神医学の世界では、「命はまず拒否している」と言います。生物の皮膚や細胞膜は少なからず吸収もしているが、それよりもまず外界の刺激から命を守っている。心理的な拒否も同じことで「私はこれが嫌」と拒否することは、それが不適応行動であっても、ある種、健康的な反応であると言うのです。過去に虐待など、抗うことができなかった辛い経験を持つ患者さんの治療段階で、外界に対してあらゆる拒否反応が出てくることがあります。嫌なことを拒否することが不可能だった自分から、少しずつ変わろうとしている反応であると捉え、矯正しません。そして少しずつ健康な反応を取り戻していくのだと言います。


◇衛くん(20歳)「J学校はいい学校だと思う。でも、俺には〝学校〟は合わなかったんだよな」。衛くんは中学で不登校になり、高校は受験しましたが、結局半年ほどで行けなくなり、退学しました。本人の中で二度目の挫折とも捉えられそうな経験ですが、衛くんは今、時を経てこのような感覚にいることに私は驚きました。「俺には」というところがミソで、「学校」と「自分」の間にちゃんと距離があり、二者を俯瞰して見ることができています。きっと渦中の頃は学校に適応できない自分が悪いと考えたり、親や環境を責めることもあったでしょう。今、学校を拒否したうえで、なおかつ自分のことを冷静にフラットに捉えている。不登校生はそれぞれいつかはわかりませんが、ある時大人になって自身の不登校を見つめなおすタイミングが来るのだと思います。過度に肯定も否定もせず、学校を拒否した過去の自分と今の自分を受け入れられたらと願います。 


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