ヘルプを出す力

子どもの広場 ゆうび

 大くん(中1)がゆうびに来るなり「バスで忘れ物した」と訴えてきました。

 大くんはスマホを持っていないので、私が代わりにバス会社の電話番号を調べ伝えました。大くんはお礼を言った後「う~ん」と悩んでいる様子。中学生がバス会社に電話するのはなかなかハードルの高いことでしょう。

 どうするかなと様子をみていると、しばらくして「ゆうびの電話借ります」と自分で電話し、しどろもどろではありましたが、なんとか連絡先と自分の名前を伝えることができました。

 その後、バス会社の方からゆうびに連絡がありました。大くんに代わると、少し話が複雑らしく「え~と、え~と」と繰り返しています。「代ろうか?」と目配せしてもしばらく自分で話を聞いていましたが、じきに「代って」と受話器を渡してきました。

 バス会社の方によると、最寄りのバス停を通るバスの運転手さんが預かってくれているとのこと。バス停に行き一緒にバスを待ちました。

 大くんは他愛もないおしゃべりをしていますが緊張が伝わってきます。大くんは運転手さんに自分で名前を言って忘れ物を受け取ることができるだろうか…。目当てのバスのヘッドライトが見えてきた頃、私に「代わりに言ってほしい」と大くん。「わかった」と私が代わりに運転手さんとやりとりしました。大くんも最後に運転手さんに「ありがとうございました」とお礼を言いました。


 中学生だし、もっと自分でやらせた方が彼のためになるという意見もあるでしょう。自分でやってみて成功したり失敗したりする経験はとても大事なものです。しかし、この話の中で大くんは自分で3回ヘルプを出せました。自分では難しいから助けてほしいと。

 ゆうびではこういう動きをとても評価します。自分のできない部分を認め、人に助けを求めるのは、自分でなんでもできるのと同じくらい大変な力です。


 「自己責任」などの圧力でヘルプの出しにくい世の中ですが、人間誰しも得手不得手があります。困ったとき人に頼っていいと知る人は他人にもまた、手を差し伸べるでしょう。


☎04・7146・3501 FAX同7147・1491(NPOゆうび小さな学園)