男なら泣くな と言わないで 

子どもの広場 ゆうび

 年長さんのMくん。保育園での一コマです。同じ年長のNくんが、「予防接種、おれ泣かなかった!」と言いまわっている。「Mくんは泣いた?」と聞かれ、前日に大泣きして予防接種を受けてきたMくんは「泣いた」と答えると「泣いたなんてかっこわるい」と言われた。他の子も「泣かなかった。全然怖くなかった!」と言っている子が多くいたということです。


 小さい子どもなので、「自分の方がすごい」と自慢するのは微笑ましいことでもありますが、「泣かない方が偉い」という価値観はどこから来ているのでしょう。怖いもの、痛いものを前にして感情が動くのは当たり前のことなのに、「泣いちゃダメ」と子どもたちが捉えているのはなぜでしょう。


 小さい頃、親や先生から「男なんだから泣くな」、「大きくなったんだからめそめそしない!」などと当たり前に言われて育ったという人は多いと思います。「男らしく強い子、逞しい子に」という願いからでしょうが、これからの時代は、それより何より大事なことがあります。


 弱みを見せないこと、「勝つこと」を最優先にすること、こうした価値観は「マッチョイズム(男らしさの規範)」と呼ばれます。小さいころから男らしさ、強さを要求され続けた場合、弱い自分はどこへ行くのか。無理やり押し込まれ、一見無くなったように見えますが、自分で納得しない限り無くなりはしません。大人になってから「あの時本当はつらかった」と出てくることもあります。自分らしさとは?自分の中の判断基準は?競争で負けたらその先は?わからなくなってしまいます。


 男らしさではなく、自分らしさを持とう。つらいことがあれば泣けばいい。自分の感情としっかり向き合うことができる人は他人の感情を推し量ることができ、心にしなやかさを持つことができます。「泣くのは恥ずかしいことじゃない。どんな時も自分の気持ちを大事にするんだよ」とMくんには伝えました。


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