茂君は18歳。中学生の頃に不登校になり、今は高校に通いながらたまにゆうびに顔を出し、遊んでいます。
ゆうびはフリースクールで、学園生から月謝を頂戴しています。月謝の締め日のようなものは特に無く、個々のご家庭が決めて月の始めか終わりあたりに、毎月手渡しで戴いています。
茂君は家庭の事情で月謝の支払いが数ヶ月滞っていました。「金銭的に払えないというわけではないが、少し猶予がほしい」と言うので、ゆうびの園長が茂君と話し合い、園長が未納分の月謝のお金を、期限付きで貸与することになりました。
その後数ヶ月が過ぎ、お金の約束の期日が過ぎましたが茂君は月謝を持って来ず、連絡もありませんでした。そうしてまた数日経ったある日、茂君が変わらない様子でゆうびへ来ていました。家庭のことも気になったので私は声をかけました。茂君はお父さんと2人暮らしでしたが、お父さんが病気になり、バタバタしていたというのです。「そうか、それは大変だったね。それなら月謝のことも仕方ないか…」とつい私は思いました。
しかし、園長は静かに茂君を叱りつけました。「今日来たら、まず君からその話を僕のところへしにくるべきだ。お父さんのことを言い訳にするな。来られない事情があったなら一本電話を入れればいいはずだ。借りたお金のことをおろそかにするな」。茂くんはぶすっとした表情をしていました。大抵の事情は本人の意思を尊重し、融通できるのがゆうびです。生活に不安もあり、茂くんの中でそんなゆうびに甘えたい気持ちもあったのかもしれません。
ですがもうすぐ20歳。お父さんと2人暮らしで、そのお父さんが病気となれば茂君は人より早く大人にならなければなりません。園長は早くお金を返して欲しくて厳しいことを言ったのではない。『お金のことをはじめ、人と人との約束を守ることは、人からの信用と自分の尊厳を守ることだ』、『自分ひとりでどうにも出来なかったら自分からしっかり助けを求められる大人になってほしい』。厳しい言葉の中に茂くんへの愛情を感じた一場面でした。
☎04・7146・3501 FAX同7147・1491(NPOゆうび小さな学園)杉山 麻理江