気象庁は、6月から8月までを夏としています。まもなく5月が終わり、カレンダーを1枚めくることになりますが、これは同時に夏の始まりでもあります。しかし実際は本格的な夏の暑さが来る前に、その移行段階ともいえる長雨の季節(梅雨)があります。
東葛地域が位置する関東甲信地方では、6月7日頃から7月19日頃までが平均的な梅雨の期間です。
梅雨は天気がぐずつき、薄暗くジメジメとした日が多くなります。そのため、お出かけもちょっと億劫になってしまうかもしれませんね。そこで雨の日のお出かけが楽しくなりそうな言葉や景色を紹介してみたいと思います。
まず梅雨(ばいう)という言葉に注目してみましょう。これは中国から来た言葉で、梅の実が熟す頃に降る雨だからとか、黴(かび)が生えるような雨で黴雨(ばいう)から来ているとか、由来には諸説あります。ちなみに古くは五月雨(さみだれ)と呼ばれました。
また梅雨入りのことを古くは墜栗花(ついり)と言いました。梅雨入りが栗の花が落ちる頃に重なるからです。そこで探してみたいのが、「熟した梅の実や、落ちた栗の花に降る雨」という景色です。
また本格的な梅雨に先がけて、一時的に雨の日が続くことがあり、これを「走り梅雨」と言います。この頃になると野山はウツギ(卯の花)の白い花が目立つようになります。この花を腐らせてしまうような長雨ということで、走り梅雨には卯の花腐し(うのはなくたし)なる異名があります。
またこの頃に吹く雨っぽい南風のことを「茅花流し」と言います。チガヤ(茅花)の穂がほぐれる時期だからです。
梅雨の最中でも晴れる日があります。梅雨の中休み、または梅雨晴れと呼ばれるもので、五月晴れは本来このことを指す言葉でした。梅雨晴れの日は、アジサイやタチアオイなどの花と青空を合わせた風景を押さえておきたいところです。
それから昔の美しい表現として、軒の糸水・軒の玉水(いずれも雨垂れのこと)や、潦(にわたずみ、水たまりのこと)などもあります。このように梅雨の季節や雨にまつわる美しい言葉は星の数ほど存在します。
これらの言葉をうまく取り入れながら、雨の季節を楽しく豊かに乗り切っていきたいですね。
わぴちゃん(岩槻秀明)プロフィール
気象予報士。自然科学系のライターとして植物や気象など自然にまつわる書籍の制作に携わり、著書は20冊以上におよぶ。
千葉県立関宿城博物館調査協力員、野田市史編さん委員会専門委員なども務める。宮城県生まれ野田市育ち。わぴちゃんホームページ