梅雨の晴れ間、稲毛ヨットハーバーへ行ってきた。車で駐車場へ入ると、ウィンドサーフィンをする人々が楽しそうに準備をしていた。すぐ前が検見川の浜だ。
管理棟「クラブハウス」1階の通路の先に小さな港が見えた。出口付近にいた女性に港の方へ降りて行けるかと尋ねた。「行けますよ。何年か前はクルーザーが停泊していたこともあった。これからジャズダンスの練習です」と言って二階へ上がっていった。
外へ出ると、千葉大と名前の付いたヨットに帆を張り、手早く出発の準備をしている2人の大学生と出会う。しばらく港周辺を散策。白い雲が早くも夏の到来を告げているようだ。
先ほどの学生たちが乗り込んだヨットが港の出口を通過、東京湾へと向かっている。岸壁に腰かけて釣りをしている男性もいる。海風を受けて気持ちよさそうだ。
管理棟へ戻り、3階のレストラン「ヴェスプチ」へ入った。豪華な花のアレンジメントの先には、素晴らしい海原の眺めが広がっている。海側のテーブルでは女性たちが談笑していたので、私は少し遠慮して、角の席に着き、松林を静かに眺めた。この稲毛海浜公園は想像していたより広い。歩いて回るにはかなりの距離だ。
会計を済ませ、レストランから出ると、大きな絵画が目に飛びこんできた。宮廷サロンでフルートを演奏している構図だ。そう言えばこのヴェスプチでもギターの演奏会が開催されているという。
先ほどのウィンドサーフィンが気になったので浜辺へ出た。海には光の中で、様々な帆が風を受けて揺れていた。風と波、人のハーモニーが美しい。
浜辺を後にして車で稲毛記念館へ。館内では「稲毛の暮らしの移りかわり」を人形で説明。かつて漁業が盛んで、海苔を干す作業の様子や打瀬船の模型などが展示されていた。展示パネルから、稲毛は60年前までは多くの別荘や旅館が建ち並ぶ海辺のリゾート地であったことがわかった。
海気館という旅館には島崎藤村や徳田秋聲など多くの文人たちが滞在し、作品を執筆した。私が興味を持ったのは稲垣足穂。著書「ヒコーキ野郎」に飛行家への愛着をまとめているのものだ。稲毛は民間航空発祥の地でもある。
稲毛記念館を後にして、10分ほど歩くと、海に突き出た桟橋が見えた。先端に円形のバーカウンターが設置されている。
ワールドパークが運営する「ピアカフェ」だ。人々は飲み物を注文、海を眺めながら、ゆるやかに流れる時間を楽しんでいる。
眩しい太陽と光る海を背景に、人々のモノクロのシルエットが南仏の光景を彷彿とさせる。この後、数時間後に東京湾に沈む真っ赤な夕陽を想像した。