伝慈覚大師筆「色紙金光明最勝王経巻第六(しきしこんこうみょうさいしょうおうきょう)」
奈良時代 彩箋墨書(さいせんぼくしょ) 24.0×15.0㎝
成田山書道美術館
奈良時代、天平文化が最も華やかだったころの写経です。この頃には、写経所というお経を専門に書写する機関の活動が盛んになりました。『金光明最勝王経(こんこうみょうさいしょうおうきょう)』は、国の安泰な発展を願うお経として重んじられ、たくさん書写されました。
これは紫と薄藍色に染められた色紙に墨で書かれています。もともとは一巻の巻物でしたが、切断され断簡(切)になりました。経文を調べてみると、左右の紙の色変わりの間は七行分抜けています。色変わりの色紙経を何組か作るために、このように継ぎ合わせたのでしょう。現在はこれを含めて七枚しか確認できない大変珍しいものです。
端正な文字で、多くの写経生(写経所などで経典の書写に従事した人)のなかでも特に優れた人が書いたものと考えられ、堂々とした存在感を見せています。この連載の題字「書」の文字はこの作品の中から、一文字を採用しています。
当館で10月1日から24日まで展示します(休館日を除く)。(学芸員・田村彩華)