近藤雪竹《書の力 第41回》

ふれあい毎日連載

近藤雪竹(1863-1928)「李白詩」152.7×43.7㎝ 絖本墨書  一幅

成田山書道美術館蔵

 俳句や書に親しむ文人であった父のもと、幼い頃から漢学や書を親しんだ近藤雪竹(こんどうせつちく)は、16歳で日下部鳴鶴(くさかべめいかく)に入門し、金石から明清に至るまでの名家の書を学び研究しました。

唐の詩人・李白の有名な「早発白帝城」【(早(つと)に白帝城(はくていじょう)を発す(はっす)】の詩を揮毫(きごう)したこの作は、雪竹の行草書作品としては代表的なものです。幾度となく揮毫した書きなれた詩なのでしょう。筆は伸びやかに動いています。

この時代には東京都美術館が開館し、そこを会場にした大規模な展覧会が開催されるようになりました。広い会場でも引き立つよう、所々に目を引く大きな文字を作り、見せ場を設ける方法は、それまでの書家にはあまり見られないものです。

雪竹はこうした時代の変化をとらえ、表情豊かな作品を数多くのこしています。成田山書道美術館では、6月22日から8月4日まで「生誕160年近藤雪竹の周辺」展を開催します。(学芸員田村彩華)

(釈文)

朝辞白帝彩雲間。千里江陵一日還。両岸猿声啼不住。軽舟已過万重山。録李白早発白帝城詩。雪竹富寿。