「花の四季」西谷卯木(うぼく)(1904-1978) (昭和53年個 39.1×532.5㎝ 彩箋墨書 一巻
色変わりの地に桜や桔梗、芥子など、四季の草花が摺られた縦40㎝ほどの大判の紙に、『新古今和歌集』から花の歌を抜き出して書いています。平安古筆や写経、絵巻など数多くの複製や料紙制作を手がけた田中親美製の巻物を譲り受け、紙の文様から書く歌を選んだのでしょう。
西谷卯木は、平安古筆や良寛、墨跡、中国書画にいたるまでのあらゆるものを取り入れながら自らの表現を追求しました。1945年に神戸の空襲で左腕を失い、1977年には胃潰瘍になり、様々な障害を抱えながらも制作に励みます。「人生にはマイナスはない。マイナスをプラスにするところこそ人生があり、生甲斐があるのだ」と言います。こうした逆境を乗り越え、没年の個展に出品されたこの作からは、華やかさのなかにも枯れた味わいのある老熟した表現が見えるようです。この作品は、当館で開催中の「新春特別展書の紙」に出品しています。会期は2月18日まで。(学芸員:田村彩華)