今季もJ1リーグを戦う我らが柏レイソル。2月の開幕から3月の代表ウィークによる小休止直前の第4節を終え、2勝1敗1分と上々の好発進を決めている。
試合の主導権を奪い合うような「トランジション・ゲーム」だった京都戦、昨季J1王者に勝利した神戸戦、対戦相手だけでなく、気まぐれな強風と「自分たち」とも戦った磐田戦。先の2連勝を受けて素直に「もったいない」と感じられた名古屋戦。この4試合、相手によって少しずつ表情を変えながら、強かに勝点を積み上げたレイソル。
ハードワークをベースとした新たな「レイソルのスタンダード」を構築するかのような戦いぶりと様々なストーリーを辿る中で、目を引くのはピッチに広がるいくつかの「適材適所」だ。
まずは白井永地だ。今季MF陣に加わった白井は全試合でスタメン出場。J2で300試合を超える経験を持つ彼は「走れて止まれてまた走れる」選手。中盤の主役である高嶺朋樹、トランジションのコンダクターの小屋松知哉をサポートする活躍を見せている。数年に渡って白井をウォッチしてきたはずの強化部を笑顔にしている。
中盤で白井とコンビを組む高嶺は白井についてこう話す。
「黒子に回ってくれているおかげで、自分はやや前方でボールを受けることができていて、攻撃にも力を注ぎやすくなってきましたし、その回数は試合ごとに増えている。自分たちが常々話しているのは『お互いに近くで・関係性を持って』ということ。きっと、自分たちは今よりもっと良くなると思います」
昨季より右MFとして奮闘を見せる山田雄士を刺激しているのはロアッソ熊本から加入した島村拓弥。「左利き」という個性は昨季までのレイソルMF陣にはなかったバリュー。すでに神戸戦でアシストを記録している。
「自分にはない能力を持った選手なので、感化されていますし、本当に上手い選手。ボールを持ってからの上手さは自分も追求している部分でもあって、魅力的な選手だと思うので、自分の成長にも繋がる存在ですからありがたいですよね」
山田が島村をそう話せば、島村も力強くこう話す。
「自分には『右サイドの左利き』という個性があり、他の選手とは違うものを求められる。どんな試合や経過でも、自分は『流れ』を変えること、『時間』を作り出すことを求められるものだと認識しています。その要求に応えられるように、まずはレイソルというチームに慣れていかなくてはいけない」
この島村との連携から神戸を沈めたのは京都から加入したFWの木下康介。試合終盤に起用され、1トップや両サイド、トップ下で存在感を放っている。高さやスピード。豊かな経験とアイデアを持ち、細谷真大やマテウス・サヴィオとの相性も良好だ。
「サヴィオとマオ、2人はそれぞれやれることが違いますから、お互いにまたプレーを重ねていけば、これからもっと良くなっていく。『使い・使われ』というイメージで。自分は『色んなことができる選手』ですから、前線の組み合わせによって良い働きをしたい」
また、この木下らと「より戦術的に試合を締める」仕事を担うように映るのは、ボール奪取に長けた守備的MF土屋巧やFWながら秀逸な守備強度を持つ山本桜大。2人の連動からボールを奪取。そんなシーンが見られるほどフィットしつつある。
「やるべきことは、前線の選手たちが前へ行くのであれば、遅れないようについて行くことであり、その守備からこぼれてくるセカンドボールをしっかりと回収すること。相手のボールを跳ね返していくことだと意識をしています」(土屋)
「自分は『走れること』を買われていると考えているのですが、『守備強度』についても評価してもらえていると思っています。走れるだけではなくて、『ゴール』という結果も求められていますし、常に狙っています。欲しいです!」(山本)
古賀太陽と犬飼智也による巧みなラインコントロールは一見の価値があり、急勾配の成長曲線を描く松本健太は「確固たるもの」を欲しいままにしている。ジエゴが放つ「違い」は随所に光り、関根大輝はパリ五輪代表候補に選出された。
言わずもがな、指揮を執るのはあの井原正巳であり、声を枯らしてチームを下支えする代表的な存在は栗澤僚一と大谷秀和。「私たちのチャンピオン」だ。まさに「適材適所」、その極みである。
また、敗戦から立ち上がるという今季初のシチュエーションを迎えるが、チームに「スタンダード」と勝利の感触があるかないかは大きな違いを生むもの。だが、今はそれがある。
(写真・文=神宮克典)