Most Impressive Player 山田 康太 

レイソルコラム

 2月12日に三協フロンテア柏スタジアムで開催された第27回「ちばぎんカップ」―。


 スタジアムを沸かせたのは新加入MF山田康太選手。32分にゴールネットを揺らすと51分にはMFマテウス・サヴィオ選手とのアイソレーションからFW細谷真大選手のゴールを演出。「挨拶代わり」には十分な1ゴール1アシストの活躍で新風を吹かせた。


 試合後、「まだ、90分はきつかった(笑)」と笑顔を見せながら、山田選手はこの日、頭の中にあった自身の狙いをこう話した。


 「正直言って、まだ試合勘やフィジカルの部分で十分とはいかない中での試合でしたが、今日はたくさんのサポーターがスタジアムに来てくれていたので、技術云々も大切なことですが、まずは戦うことや走り切ることの姿勢を示そうと意識していました」


 その姿勢の甲斐もあってか、この日レイソルが記録した2つのゴールに関与。32分のゴールはポジショニングの良さから奪った結果であり、51分のアシストには視野の良さと技術の高さを感じさせ、個人としては輝いたが、山田選手の口を突いたのは課題への言及だった。


 「1G1Aという結果が数字が残せたことは間違いなく良いことですが、もっと相手と駆け引きをしながら攻撃をしていきたかった。レイソルへ来てからサヴィオや真大との連携を意識して実践してきましたが、試合となると手応えより少し難しさが残りました。特に立ち上がりは『距離感の遠さ』があって、各々が1対1で相手を剥がさざるを得ない状況だった。自分たちの意図した形があるとはいえ、まだまだ様々な工夫が必要だと感じました。この学びを活かしていきたいですね。今の時期にその学びが得られたことは大きいです」


 だが、期せずして、この「距離感の遠さ」から透けて見えたのは山田選手を含む選手それぞれの質の高さ。新布陣「4―3―3」の中で、FW仙頭啓矢選手の「推進力」はゴールへの新たな進入経路を照らすものだった。MF小屋松知哉選手の「インテリジェンス」は際立っていたし、MFサヴィオ選手が放つ「違い」はレイソルに必要不可欠。成長著しいFWの細谷選手は「ゴール」で魅せた。


 彼らがゴール前で感じさせた迫力やポジショニングは昨季にないものであり、この日の2つのゴールは適切な距離感を表現したシーンから生まれた。所狭しとピッチを駆けた山田選手はその恩恵を得て可能性を示した。そして、彼らは揃ってボールへの執着心が旺盛で守備も巧みだ。


 彼らの「距離感」が整備されればされるほど、DF古賀太陽選手はチームを操縦し、MF高嶺朋樹選手やDF立田悠悟選手、DF片山瑛一選手の魅力はシンクロを見るはず。終盤に投入されたMF椎橋慧也選手とMF戸嶋祥郎選手、DF川口尚紀選手は軌道修正を任せられる重要なピースであり、FW武藤雄樹選手は切り札として最適な存在。GK佐々木雅士選手とDF田中隼人選手、FW山本桜大選手はこの彼らとの時間からレイソルの未来を示す。この日の出場選手だけでも、とても魅力的な陣容で展開される競争と可能性を見たように思えた。


 何よりそれは山田選手が一番感じていた。

「このメンバーが良い距離感でプレーできれば、攻守にもっと良い戦いができるって思うんです。絶対に楽しいですし、自分たちならサポーターも喜んでくれる戦いができるはず。今日は結果が出ませんでしたけど、下を向く内容でもないし、そんな時間なんてないですし。試合で感じた感覚を上手く表現していきたいです」


 山田康太選手。この日に見せた選手としての魅力だけでなく、彼を造る士気も思考も面白い存在だ。


(写真・文=神宮克典)