升掛友護選手のプレーに目を奪われたのは、1度や2度の話ではない。
育成年代ではダイナミックなドリブルやチャンスメイクに長け、両サイドMFやウイングとしてチームの「花形」的役割を担いながら、次第に相手選手に絡みつくような守備を身につけプレーの幅を広げた。
トップチーム昇格後は守備に奔走しながらも、ルヴァン杯で4ゴールというインパクトと説得力のある結果を示して順風満帆のシーズンスタートを切ってみせ、多くのサポーターのハートを撃ち抜いた。
升掛選手はそこに至るまでの思いをこう話す。
「自分はいつもゴールというより、チームのためにできることを考えてプレーしています。ゴールを取れたことは良かったです。でも、全体は『もっとチームのためにできたことがあるだろ』と反省していました。ゴールを取れたことは少なからず自信になっているので、また決めたいですが、チャンスでパスを選ぶことだってあるはず。状況によって、その時のいちばん良い判断ができればいいなって」
ルヴァン杯で積み上げた結果を携えてリーグ戦で得た出番。10分もなかった出場時間は徐々に伸びていき、直向きにボールを追い掛け、ゴール前へ飛び込むだけではなく、持ち前のドリブルで打開する間合いも見つけつつあり、年代別日本代表にも選出された。
だが実感として残ったのは、トップレベルのステージとの「距離感」だったという―。
「短い時間なら勢いを持ってプレーする分、ごまかしもできた。だから、出場時間が伸びた時、『何もできていない。J1はルヴァンとは違う…』と痛感していました。ただ、今の時期にそういった経験をできたり、気づけたことは自分が向上するために重要な経験だとも思いました」
その実感とシンクロするかのように、少しずつ升掛選手の出場機会は減少。一時はゴールランキングでトップに浮上するなど、常時出場していたルヴァン杯と、天皇杯でいずれも敗退してしまったことが響いた。升掛選手は今、J1リーグで快進撃を続けるチームの中で競争の真っ只中だが、その表情は明るい。
「今の自分には『伸びシロ』しかないので、全てのレベルアップにしか興味がありません。柏レイソルというタイトルを狙える順位で上位争いをしている強いチームの一員として、プロ1年目から出場機会をもらうこともできましたし、トップへ昇格する前には思ってもみなかったシーズンを送れて、たくさんの経験ができています」
さらなるレベルアップを誓い、自分を磨き続ける日々の中で、刺激的な出会いもあった。すぐそばでプレーしているある「花形選手」。升掛選手は目を輝かせながら、こう話した。
「今は…『武藤(雄樹)さんしか見ていない』と言っていいほど、プレーを目で追っています。経験の違いや動きの質など、武藤さんのプレーは自分にとって刺激的で、すべてが『手本』。試合や練習でも、武藤さんを追いかけているんです。スピードや体力面なら負けていないはずなのに、自分と何が違うのか。自分のレベルアップのために、トップレベルで活躍する選手になるために、武藤さんから吸収できることすべてを吸収したい。近くで学べて幸せです」
良い思考と良い経験を持ち、良い手本に出会った升掛選手のプレーに再び目を奪われる時、彼はどんなプレーを見せてくれるだろうか、私は楽しみでならない。
(写真・文=神宮克典)