素敵な時間ー柏レイソルの「レイソルしま専科」

レイソルコラム

 10月15日、柏レイソルは、学校訪問 「レイソルしま専科」を実施。柏市立田中小学校を訪問した。

柏市立田中小学校

 今や様々な様式で開催される、この「しま専科」。柏市を中心としたホームタウン(東葛8市)の小学6年生を対象に、選手が自身の経験を話したり、実技披露を行う授業だが、子ども支援活動を行う国際的NGOとして知られる「セーブ・ザ・チルドレン」とのコラボレーションによる「子どもの権利」という授業形式もあるし、過去にはビジョンや映像を用いたプレゼンテーション形式なども行われてきた。今年は春にも展開をするなど、訪問回数を増やしているのも特徴だ。

 この15日は本来のスタイルでの訪問。田中小へ向かった「スタメン」はマテウス・サヴィオと細谷真大と守田達弥、立田悠悟。同校の事務方さんの中にはレイソルサポーターの方がおり、緊張されていたのが印象的だった。生徒作成のウェルカムボードにも気合が入っていた。体育館に集まる生徒たちの中にはサヴィオや細谷の名を叫ぶ生徒も。

 午後14時をすぎた頃、田中小の生徒のみなさんが大きな手拍子で迎える中、自らの経験談や秘蔵エピソードを披露した。

 優しい表情で生徒たちを見つめて、「こんにちは。マテウス・サヴィオです」と話を始めたM・サヴィオにとって今日は初の「しま専科」ー。

 「小さな頃から両親に『サッカーと勉強の両立を』と言われて育ってきた。自分はその約束を守り続けてきたけれど、どちらかを選ばなくてはならなくなり、サッカーを選んで今に至ります。得意教科ですか?実は数学が得意なんだ」

 なかなか聞けない少年時代のエピソードに生徒たちは前のめり。

 「13歳の頃に家を出て、育成組織の寮で生活をしながらサッカーを学んできたから、離れて暮らす両親や家族、友人に対する思いは特別強いんだ」

 「今、自分が叶えたい夢は『柏レイソルにタイトルをもたらすこと』だよ」

 そう話すサヴィオに目を輝かせる生徒たち。

 その空気の中、次にマイクを持ったのは守田。

 「自分がみなさんくらいの頃、身長は172センチくらいありました。1日何食も摂るくらい、たくさんごはんを食べて大きくなりました。縦に大きくなってね、背がすごく伸びて。水泳とサッカーに夢中な子供でした」

 「うそー!」と盛り上がる体育館。やはり4人のお子さんのパパらしく、守田は「子供たちの食いつきの良い話題」を披露してから、「本質的な話題」を生徒たちに投げかけた。

 「例えば、サッカーでも他の習い事でもいいんですけどね、自分のために習い事へ送り出してくれるご両親や準備をして指導をしてくれる指導者のみなさんへの感謝を忘れずにがんばってください」

 次は立田だった。生徒たちの質問に応える形で少年時代を回想。サッカーを始めたきっかけはやっぱり「王国・静岡」らしいものだった。

 「最初は友だちが校庭でサッカーをやっていて、かっこいいなって思って。その影響でサッカーをはじめました。小さい頃はすごく負けず嫌いな子で、すごく泣き虫でした。友だちや試合に負けたりすると、いっつも泣いてました。『泣き虫』でしたね」

 大きくもなく、小さくもなく、とても雰囲気にフィットした優しいトーンで披露されたのは、まさか、まさかのエピソード。

 「立田選手は昔からパンが大好きなので、子どもの頃に『将来、どうやったらパン屋さんになれるのかな?』って真剣に調べたり考えていたことがあります」

 立田の親友・古賀太陽も目や耳を疑ったというこんなエピソードが聞けるのも「しま専科」の良いところ。どちらというと話題の幅を狭めずに広く展開させていた立田の話術は印象的だった。「見て分かると思うのですが、勉強ができそうでしょ?」という問い掛けはその代表的な例だ。

 最後は細谷。「自分は『泣き虫』ではなかったですが、すごく負けず嫌いな子でした」。そんな話を始める細谷。立田は小声で何やら言っていた。やはりパリ五輪の勇姿を知る生徒たちは食い入るようにその姿を見つめていた。やはり、五輪に関する質問もあった。

 「パリ五輪メンバーに選ばれた時は幸せでしたし、大会でゴールを決められたことは大切な思い出。自分の中にある次の夢は『W杯へ出場して活躍すること』で、そのために日々練習に打ち込んでいます」

 生徒からの「サッカー選手になっていなかったらどんな仕事をしていたと思いますか?」という旨の質問に対して細谷は彼らしく返答してみせた。

 「たぶん、サッカー関係の仕事をしていたかなと思いますけど…自分は『サッカー選手』という夢に向かって、ずっとがんばってきました。いつも『応援してくれているファンの方やサポーターの方々に喜んでもらえて、笑顔で家に帰ってもらう』ことを目標に戦っています」

 そんな「細谷らしさ」を生徒のみなさんへ見せつけたと思えば、「サッカーが好きでサッカーばかりして、両親に『勉強を』と言われ続けていたので、みなさんは絶対に勉強をしてくださいね(笑)」と最も大切なアドバイスをすることも忘れなかった。

 この時間にして1時間ほどの「しま専科」を終えて4選手とハイタッチを交わして、「細谷とタッチしたから今日手を洗えない!」、「サイン欲しかったな!」と体育館を後にする生徒たち。刺激的な良い時間となっていたら、同じ東葛地区で育った1人の柏市民として素晴らしいこと。

 では、選手たちはどうだったのだろう?

 4人を代表して、マテウス・サヴィオがこの日を振り返ってくれた。

「あの『しま専科』の時間については、自分は『すごく素敵なこと・すごく素敵な時間』だったと思っているよ。私たちの言動そのものは今や様々なメディアを通じて目にしてもらうことが多いはずですけど、自分たちの行動や言葉を、彼らの間近で見聞きしてもらえるこの機会に臨むことに関しては、『1人の大人』、『社会の一員』として、子どもたちにとって、『1つの良い例』となれればいいなと思うばかり。少しでもそうなってくれたら、とても良いふれあいが交わせたということになるのだと思う。我々サッカー選手というのはピッチの内外で彼ら彼女らの模範とならなくてはいけないね、その意味でも自分にとってもすごく良い経験でした」

 この何も付け加えを許さない素晴らしいコメントをもって、この素敵な時間のレポートを終えようと思う。「しま専科」は今年あと数回展開される予定だ。

(写真・文=神宮克典)