放送開始100回記念
音楽家がステージで語りつくせない想いを語る
「ラジオ成田」(成田市東和田)から毎週木曜13時~14時と21時~22時の2回放送されている人気のラジオ番組「ピースリー・ミュージック」が3月2日、記念すべき100回目を迎える。
番組はトークと音楽で構成され、2021年4月にスタート。時には心に沁みる生演奏も披露され、味わい深いトークにファンも多い。パーソナリティーはバイオリニストのまつのじんさんとチェリストの植草ひろみさん。スタジオに伺い、インタビューを行った。
■ラジオ成田 成田市にある地域密着型のコミュニティラジオ局。地元の話題や楽しい情報を届ける。スマートフォンやパソコンなどからのアクセスで、全国どこからでも聞くことが出来る。(QRコード)
●まつのじん まつのじん 大阪南河内の生まれ。バイオリニスト・エッセイスト。端正なマスクで輝く音色とウィットに富んだトークでステージを持ちつづけ、2024年には音楽生活55周年を迎える。京都市立芸術大学卒。
☆「松野迅バイオリンリサイタル」4月9日14時「よみうり大手町ホール」。チケット一般3000円。▽問☏090・7107・6661。
●植草ひろみ 船橋市生まれ。チェリスト・ベジタブル&フルーツアドバイザー。10年間、新日本フィルハーモニー交響楽団で活動の後、幅広い音楽ジャンルのソリストとして活躍。東京藝術大学音楽学部卒。
☆「植草ひろみチェロリサイタル」7月23日14時「王子ホール」。チケット全席指定5000円。▽問☏047・426・3147。
ラジオ成田「ピースリー・ミュージック」
放送開始100回記念
布施通信員 放送収録に訪問
番組収録には弊紙記者も参加。音楽の力や魅力、食文化と音楽の接点、生演奏をリスナーと共有すること、ラジオという文化などについて質問した。(これらは3月9日の101回目に放送予定)。
収録後には「人生の中でのラジオとのかかわりについて」聞いた。
「父がラジオ番組の制作者だった。私はそれをずっと見ていたので、今こうして番組を持っているので、父は喜んでいるのでは」と植草さん。「お父様の番組作りの蓄積を受け継ぐことが出来たのはよかったですね」と松野さんの優しさ溢れる言葉が続く。
「ずっと前から、エストニア、ポーランド、ハンガリー、ウクライナ、中国など様々な地域でラジオ番組に出演していて、その時の反響の大きさ、用意された質問の真剣さにひるみそうになったこともある。なかでもターニングポイントになったのは昔の北京放送に出演した時で、歴史のうねりを感じた」と松野さん。
「音楽との距離」についての質問に、植草さんは演奏家や指導者としても活躍するが、リラックスタイムには音楽を聞かないそう。「レストランでBGMが流れると、自分が弾いている姿が浮かんできてしまう」と笑う。「オーケストラにいた時、年間120本のコンサートをこなす世界に何年もいた」と、当時の多忙極まる日々を振り返る。
「この番組を持ち、いろいろなことを知り、音楽との向き合い方が大分変わってきた」と、ラジオの音楽番組が植草さんにとって次の活動の新しいステップになっている。
松野さんは最後に次のように語ってくれた。「自分の歴史の中で、音楽と関係のない、茶の湯の世界に居たことがある。静かな空間で人と向き合うのは子どものころからの生活の一部。それが貴重であると気づくのには時間がかかった。今も茶席に招かれるが、そういう時間があると次に自分が演奏するとき、新鮮な気持ちになれる」。
松野さんは小さなスタジオを静謐な茶室に見立て、客人をもてなすように、周到な準備と設えでマイクに向かい、視聴者の心にやさしく語り掛けているのだと思った。コロナ禍で始まったこのラジオ番組がリスナーの心の中へ静かに染み入っていくのがよくわかる。
●ラジオ成田「ピースリーミュージック」放送
毎週木曜13時~14時と21時~22時(再放送)。