頭部打撲時の対応 

名戸ヶ谷病院 脳卒中センター
名戸ヶ谷病院 脳卒中センター・センター長 脳神経外科部長 井上 靖章

 関東でも雪の積もる寒い日が続きました。足元に気をつけていても滑って転倒してしまうことがあるかもしれません。今回は転倒時等に頭を打撲してしまった場合の対応についてお話したいと思います。


 まず大前提として、年齢とともに骨が脆くなるため、ちょっとした転倒でも腕や腰、脚を骨折してしまうことがあります。腰や大腿骨の骨折は寝たきりの原因にもなることがあるので特に注意が必要です。


 一方で、頭は頭蓋骨という分厚い骨があるため、そう簡単には脳にダメージがくることはありません。頭を打撲した際に「不安だから念のため」と救急車を呼んで来院する方が多いですが、基本的には普通に会話して動くことができれば、その時点では救急車を呼ぶ必要はありません。救急車ではない交通手段で救急外来を受診して下さい。


 救急要請をして頂きたいのは、意識がない、ぼんやりしている、会話が成立しない、手足を動かさない、痙攣しているなどいつもと様子が違う場合や、高所からの転落や交通事故等の高エネルギーでの打撲の場合です。


 成人の頭部打撲では、局所のたんこぶは骨の外の話なので頭蓋内の脳への影響はありません。ただし広範囲の皮下血腫などは頭蓋骨骨折を伴う場合もあるので注意が必要です。


 病院ではCTを撮影して骨折や脳への損傷、頭蓋内出血の有無を評価します。65歳以上の方、抗血栓薬を内服中の方、肝疾患や腎疾患をお持ちの方などは、症状がなくとも検査をおすすめします。


 その日のCTで異常がなくとも、高齢になるとじわじわと血腫が溜まって脳を圧迫し1週間から1ヶ月後に症状が出る慢性硬膜下血腫という病気が生じることがあります。転倒後しばらくしてから頭痛や手足を動かしにくい、ぼんやりしている等いつもと様子が違う場合は脳神経外科を受診して下さい。 



社会医療法人社団蛍水会 名戸ヶ谷病院脳卒中センター(新柏駅から徒歩約7分)☎04・7167・8336