中村メイコさんと言えば、昭和を代表する大女優。名家のお嬢様でもあるし、さぞかし派手な生活を送り、交友関係も華やかな方なのだろうな、という先入観を持って読んだところ「皆さんが思い描く『大女優』のイメージどおり、大きな家に住んで大量の洋服を買いこみ、お酒や食器をコレクションする人生を送ってきた。」(原文ママ)とある。なんと期待を裏切らない人だろう!
そんなメイコさんが「終の棲家は少し狭いくらいがちょうどいい」と、大豪邸の三分の一ほどの広さのマンションへ引っ越す時に処分したものは、なんとトラック7台分。
大切な写真や忘れられない人からもらった手紙など、誰しも「捨てがたい」と思うものがあるはず。そのひとつひとつに「ありがとう」と声をかけながら処分していく様子は切なくもあるが、「お別れ時」を受け入れて、前に進んでいく姿に勇気をもらえる。
高倉健や美空ひばり、エノケンといった昭和の名だたる大スターたちとのきらびやかな交流を垣間見つつ、片付けのテクニックを学べるおトクな終活本。女優、中村メイコが87歳で行き着いた「身軽で愉快な暮らし」を覗いてみては?
■中村メイコ
作家、故・中村正常氏の長女として生まれる。2歳の時に映画「江戸っ子、健ちゃん」(P・C・L映画製作所/現東宝)にてデビュー。その後、数多くの作品に出演し天才子役として注目される。1957年に作曲家・神津善行氏と結婚し一男二女をもうけ、「神津ファミリー」として親しまれる。数々の昭和を代表とするスターとも親交があり、日本の芸能・放送史を知る上で貴重な存在。