少年易老学難成

K太せんせいの「放課後の黒板消し」

K太せんせいの放課後の黒板消し89

 

 毎日のように焦げるような暑さです。まるで熱帯のような台風並みの夕立が夏休みを全力疾走する少年たちに襲いかかっています。同じアツさでも、パリ五輪の選手たちの熱さには声援を送りたいと思います。

 さて、今回のテーマはある有名な漢詩の一部です。「少年老いやすく学成りがたし」と読んでしまえば聞いたことがある人も多いでしょう。夏休みの少年たちにはもう一つ「宿題」が襲いかかっていることを考えると自然と思い浮かぶ詩です。

 意味は「若者はあっという間に年をとり、学問はなかなか身につかない」。続きは「一寸光陰不可軽(一寸の光陰軽んずべからず)」で「(だから)ほんのちょっとした時間でもおろそかにしてはならない」という意味です。

 「学」という字はもともと「學」と書き、「子どもが身ぶり手ぶりでものを真似ならう場所、ならう意志」という象形が組み合わさってできた漢字です。また、「まなぶ」という読みの元も「まねをする」という意味の古語「まねぶ」だということから、単純に「勉強する」というだけではないことがわかります。

 辞書にもたとえば「見習って知識・知恵・技術を身につける」や「教えを受けて知識や技術を習得する」とあるように、黒板をノートに写すだけではいけないことが分かります。「経験を通じて貴重な知恵を得る」こともまた学ぶということです。遊びも含めて夏休みに色々な経験をすることも大切ですね。

 さて、耳が痛いかも知れませんが「学ぶ」をテーマにした漢文をもう一つ。「謂学不暇者、雖暇亦不能学矣(学ぶに暇(いとま)あらずという者は、暇ありと雖(いえど)も亦(ま)た学ぶ能(あた)わず)」。

意味は「勉強する(物事を学ぶ)のに時間が無いと言う者は、時間があったとしてもやっぱり勉強することはできないものだ」…。「勉強」の部分が旅行やダイエットに変わっても通じる真理かもしれませんが……。いずれにせよ「光陰矢のごとし」夏休みはあっという間です。充実した学びを!

■K太せんせい

現役教師。教育現場のありのままを伝え、読書案内なども執筆する。