放課後の黒板消し82
本稿「k太せんせいの放課後の黒板消し」の中で「文学の窓」と銘打ち綴った文章の最初は、ちょうど2年前の12月号。〈冬〉をテーマにしたものでした。
今回は最初のテーマに近づいて〈雪〉にまつわる詩について綴ろうと思います。
冬は四季の中でもその訪れを力強く感じさせられる季節です。木枯らし一号のニュースや富士山の初冠雪、初霜に初雪など、直接的にその到来を感じます。そこで思い出されるのは雪の訪れを切り取った詩の数々です。
堀口大學は「雪」にて
「雪はふる!雪はふる!
見よかし、天の祭りなり!
(中略)
いときよく雪はふる、
沈黙のうちに散る花弁!
雪はしとやかに
おどりつつ地上にきたる。
雪はふる!雪はふる!
白きつばさの聖天使!
(後略)」と表しました。たくさんの「!」に雪に対する心躍る様子が伝わってきますね。
一方で、同じ雪でも中原中也は…
「汚れっちまった悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れっちまった悲しみに
今日も風さへ吹きすぎる
(中略)
汚れっちまった悲しみは
小雪のかかってちぢこまる(後略)」と、かの有名な恋愛詩に綴りました。
そんな雪が持つ重みを、星野富弘は「竹」を通して表現しました。
「竹が割れた
こらえに こらえて倒れた
しかし竹よ その時おまえが
共に苦しむ仲間達の背の雪を
払い落しながら倒れていったのを
私は見ていたよ
ほら倒れているおまえの上に
あんなに沢山の仲間が
起き上がっている」
雪そのものの美しさも、雪の中に生きる生命の強さも、心の中に降る雪も。文学が表現する雪は、もしかしたら本物よりも身にしみるものかもしれませんね。
■K太せんせい
現役教師。教育現場のありのままを伝え、読書案内なども執筆する。