全力で脱力…いい塩梅
(あんばい)
「おはようございまーす。すみません、寝坊しちゃって」。冬将軍が猛威を振るう冬の朝、一時間目の教室に勢いよく飛び込んでくる生徒がいます。寝ぐせバッチリ!布団から出たくなくてグズグズしている間にいつの間にか二度寝してしまったのだということが容易に想像できます。「あと五分だけ…」はいつの時代にも共通の言葉のようです。
さて、遅刻はいけないこととして、このようにあっけらかんと教室に飛び込める生徒がいる一方で、一分でも遅刻すると途端に「教室には入れない」という気持ちが強くなる生徒がいます。注目を浴びたり謝罪することに抵抗があったり、授業を止めることに申し訳なさを感じたりと理由を探せば色々ですが、総じて根底にある気持ちは「遅れて入るくらいなら、次の時間の最初からから『ちゃんと』入った方が良い」というものです。
似たような場面に「中途半端なものじゃなく『ちゃんと』したものを出したいので、今日締め切りのレポートは明日提出でもよろしいですか?」と期限よりも完成度を優先する申し出があったりもます。
他にもピアノなどの練習で失敗したときに「最初からやり直さずにはいられない」となったり、問題集やテストは「第一問から順番に解かないとダメ」で、飛ばして取り組むことが出来なかったりという場合も。
これらは「不完全な完璧主義」と呼ばれる現象で、誰しもが持ちうるものですが、強すぎてしまうと物事が前に進まず苦しくなってしまいます。
心を整えていつもどおりの力を発揮するために行う「ルーティーン」や「おまじない」も、強すぎれば「邪魔されたからもうダメだ」「儀式はひとつも疎かにできない」というガチガチの負の強制力になってしまいます。
「良い加減」や「腹八分目」…完璧ではないことの中にも気持ちよく生活を送る知恵があります。自分を少しだけ許して、緩めてあげてみてはどうでしょう。
■K太せんせい
現役教師。教育現場のありのままを伝え、読書案内なども執筆する。