『宇宙においでよ!』 「三次元アリ」のお話
「どうして宇宙に行くの?」皆さんはこの素朴な質問に何と答えますか。浮かんでみたいから、丸い地球を見てみたいから……色々あるでしょう。しかし一方で、私たちの世界にはたくさんの問題が山積みになっているのに、それらを差し置いて宇宙に出る必要があるのか、と疑問に思う人もいるでしょう。
『宇宙においでよ!』(講談社)は宇宙飛行士の野口聡一さんが書いた「宇宙一わかりやすい宇宙の本」です。その中で野口さんは「地上に問題が山積みになっている今だからこそ、宇宙に向かっていくことがだいじ」と述べ、その理由を「三次元アリ」のお話で説明しています。
まず、自分が小さなアリになったところを想像します。ある日、行列して歩いているとその先に小さな石ころが落ちていました。もしもこの時、先頭のアリが直線上を前後に動くことしかできない「一次元」アリだったら、その先には進めません。つまり小さな石ころは世界の終わりを意味します。
そんな時、後ろから別のアリがやってきて前後だけでなく左右にも進み始めました。二次元(平面)アリの登場です。彼らは石ころがあっても回り込んで進めます。これで「石ころ問題」は解決!
ところが、今度は石が無限に左右に繋がった壁が現れました。いくら前後左右に動いても進めません。そう、この壁を越えるためには上下を加えた「三次元」の動きが必要なのです。三次元アリならば難なく壁を越えて、その先の世界を見ることができます。
つまり今直面している壁=問題は「別の次元」で見ると突破できるというのです。心の視点に宇宙という地上とは別の次元が意識されることがどんなに大切か、目からうろこのお話だと思います。このお話は漫画『宇宙兄弟』(小山宙哉/講談社)にも掲載されました。
この本には他にもワクワクでいっぱいの世界が、とってもやさしい言葉で綴られています。空を見上げながら、ページを開いてみてください。
■K太せんせい現役教師。教育現場のありのままを伝え、読書案内などを執筆する。