DRリポート237回

ふれあい毎日連載

第3回「非歯原性歯痛」

日本大学松戸歯学部付属病院副病院長

(歯科総合診療学講座教授) 内田貴之先生

(歯科総合診療学講座教授) 内田貴之先生

歯痛には痛みの原因が歯である「歯原性歯痛」と、もう一つは歯が痛いにもかかわらず、痛みの原因が歯や歯ぐきではない「非歯原性歯痛」があります。前回はいくつかある非歯原性歯痛の中で最も多い「筋・筋膜性歯痛」について説明しました。第3回はその他の非歯原性歯痛についてお話しします。

神経障害性歯痛(発作性、持続性)

発作性のタイプの痛みは主に三叉神経痛によって引き起こされます。顔の神経の痛みのことを「顔面神経痛」ということがありますが、顔面神経痛という病気はありません。

顔の周りの知覚は「三叉神経」により感じられるため、顔の神経の痛みは「三叉神経痛」といいます。三叉神経というのは、一つの神経が三つの枝に分かれている神経で、一つ目が頭の上から額の辺り、二つ目が目の周りから上唇、上の歯、三つめが下あご全体から下の歯の感覚を感じます。

このため三叉神経の二つ目の枝に障害があると上の歯が、また三つ目の枝に障害があると下の歯が痛くなることがあります。痛みが広い範囲に及ぶため、歯が原因ではないかと感じることもあります。痛みの特徴は、痛みが非常に強くて鋭い痛みですが(電気が走るような痛み)、一方、痛みを認めないときは全く痛みを感じません(全か無か)。

持続性のタイプは帯状疱疹のウイルスが歯の神経の近くまで達した時に生じる痛みです。帯状疱疹ウイルスが神経を破壊する時に生じる痛みなので、感覚が鈍くなったり、ジリジリ(灼熱感)とした痛みを持続的に引き起こします。

神経血管性歯痛

 頭の中の血管が腫れることで生じる頭痛(神経血管性頭痛)には、主に片頭痛と群発頭痛がこれに該当します。片頭痛というのはよく聞かれると思いますが、群発頭痛は片側の顔面に発作性の激痛を認めることが特徴で、男性に多く、上顎大臼歯にズキズキした歯痛が表れることがあります。

心臓性歯痛

狭心症や心筋梗塞などの心臓の病気から歯に痛みを生じることがあります。心臓の病気の時によく言われる胸の痛みとは違って、口の中に圧迫されるような痛み、ジリジリした痛みとして現れます。多くは下あごの両側の奥歯に認めることが多いようです。

他にも不安やウツ傾向が強い心理的な変化で歯痛が生じたり、脳の腫瘍などで歯痛が生じることもあります。また口腔顔面痛を専門としている私達でも、どうしても原因がわからないため特発性歯痛(以前は非定型歯痛とも呼ばれていました)と診断しなくてはいけない歯痛もあり、歯痛の原因には多くのものがあります。

このため原因がなかなかつかめないような歯痛が続くようであれば、一度、口腔顔面痛を専門にしている歯科医院(病院)を受診することをお勧めします。

■日本大学松戸歯学部付属病院☏047・360・7111(コールセンター)

☏047・368・6111(代表)