DRリポート235

ふれあい毎日連載

原因がわかりにくい歯痛

日本大学松戸歯学部付属病院副病院長

(歯科総合診療学講座教授) 内田貴之先生

(歯科総合診療学講座教授) 内田貴之先生

「歯痛」という言葉から、みなさんはどんなことを思い浮かべるでしょうか。黒くなって大きな穴が空いている歯や、腫れて赤くなった歯ぐきを思いつくのではないでしょうか。

歯痛の原因

歯痛の原因の多くは、虫歯(う蝕)が歯を壊して歯の中にある神経(歯髄しずい)を痛めるため歯痛が生じたり(歯髄炎)、歯ぐきが炎症を起こして歯を支える歯ぐきに痛みが生じます(歯周炎)。このような歯や歯ぐきが原因の痛みを「歯原性歯痛」といいます。

一方、歯の痛みの中には歯や歯ぐきに原因がないにもかかわらず歯に痛みを生じることがあり、これを「非歯原性歯痛」といい、痛いと訴える歯に原因がありません。

痛みを訴えて歯科を受診される患者さんの多くは歯原性歯痛ですので、口の中を検査やレントゲン検査でほとんどは原因を見つけることが出来ます。しかし歯原性歯痛でも非歯原性歯痛のように歯に原因が見つからない場合があるなど、歯の痛みにはいろいろな原因があります。そこで3回にわたり原因がわかりにくい歯の痛みについてお話しさせていただきます。

歯根の割れによる痛み

写真左上から右下にひびが入った歯(治療途中の写真)

歯の神経は強いダメージを受けると元の状態には戻りにくいため、歯髄炎には神経を取る処置を行います。この時、神経だけが取れるわけではなく、神経と一緒になっている歯に栄養を供給している血管も取ることになります。

このため神経を取る処置をした歯は、木でいうと枯木と同じになってしまい割れやすくなってしまいます。このため神経を取った歯には歯の根(歯根)の中に芯棒となる土台を立てて、その上に冠をかぶせて補強する治療をしますが、それでも歯、特に歯根が割れてしまう場合があります。

歯根が割れると、割れたところから歯ぐきに感染が広がり歯ぐきが腫れてしまいます。この場合、歯の神経はないのですが歯(歯ぐき)に痛みを認めることになります。ただ歯、歯根が割れる場所は、いろいろなところで割れるので、見つけるのに苦労することがあります。

「歯痛」様々な要因

さらに歯が割れるのは神経がない歯だけでありません。神経がある歯でもヒビが入り、そこから細菌が歯髄をダメにして痛みが生じます。冷たいもの、熱いものを口に含んだような口の中の温度変化で痛みが酷くなるような場合は(時には冷たいものを口に含むと歯の痛みが逆に和らぐこともあります)、すぐには見えなくても口の中のどこかの歯の神経が悪くなって痛みが生じている可能性があります。

同じように冷たいもので歯にしみる症状として象牙質知覚過敏症がありますが、こちらは一過性にしみる感じと表現され、歯の神経がダメージを受けて生じる痛みはズキズキした痛み(拍動性)と表現されることが多いです。

歯が黒くなっている、歯に穴が空いているのを見つけると、患者さんはすぐに歯科を受診していただけますが、痛いけど見て悪いところが見当たらないと、なかなか歯科を受診するのをためらってしまうことが多いようですが、早めの歯科への受診をお勧めします。

■日本大学松戸歯学部付属病院☏047・360・7111(コールセンター)

☏047・368・6111(代表)