DRリポート 225           摂食嚥下(せっしょくえんげ)障害をご存知ですか?

医療最前線Drリポート

日本大学松戸歯学部 障害者歯科学講座 教授 野本たかと先生

日本大学松戸歯学部 障害者歯科学講座 講師 林 佐智代先生

「食べる」ということ

 人が「食べる」時には、栄養摂取をするだけではなく、料理を目で楽しんだり、香りや味を感じ、会話をしながら楽しい時間を共有するなど様々な要因が関連することで豊かな「食べる」が成り立ちます。専門的に「食べる」メカニズムを説明すると以下の順序になります。

①視覚や嗅覚などの感覚で目の前にある食物を認知する。②認知に合わせて腕や手が運動をして食物を手でつかんだり、食具を操作する。③自分の前歯や口唇で捕らえられる位置まで運ぶ。④咀嚼(そしゃく)や嚥下(えんげ)ができる量を口唇や前歯で口の中に取り込む。⑤顎や頬・舌を使って食物を口の中で動かし、奥歯ですりつぶしながら唾液と混ぜ合わせる。⑥飲み込める形状になったら舌で咽頭(喉の奥)に送る。⑦空気の通り道である気管の入り口を閉じ、食べ物の通り道である食道の入り口を開く。⑧食道から胃へ送る。

これらの「食べる」過程においては、感覚や歯・顎などの器官、運動するための神経や筋肉といった人間の持つ様々な因子が協調することで成り立っています。

 「食べられない」ということ

 赤ちゃんからご高齢の方まで、「食べる」過程において、何らかのトラブルが生じることで「食べられない」ということが起きてきます。例えば、「歯がなくて噛めない」、「疾患により咀嚼(そしゃく)したり、飲み込む力がない」、「嚥下(えんげ)の反射が起きずむせる」などです。これらの上手に「食べられない」ことを摂食嚥下障害といい、窒息や誤嚥性(ごえんせい)肺炎の危険性が高まったり、食べこぼしや流涎などによって外食ができないなど社会生活に影響が生じてしまう可能性があります。

摂食嚥下(せっしょくえんげ)リハビリテーションの実際

 摂食嚥下リハビリテーションでは、①食環境②食内容③摂食嚥下機能の3つの視点で評価・検査を行い、総合的な診断のもとに個々に適したリハビリテーションのプログラムを立案します。

プログラムは、ご自身もしくは介護者・保護者が日常生活の中で実施できるように指導を行っていきます。具体的には、姿勢や使用食具の選択などの食環境指導、食物の形態や調理方法などの食内容指導、そして、摂食嚥下機能に関連する神経や筋肉などに対するトレーニング方法や食べ方・食べさせ方について指導を行っていきます。

 日本大学松戸歯学部付属病院は、平成7年より摂食嚥下リハビリテーション外来を開設しており、所属する歯科医師や歯科衛生士の多くは、日本摂食嚥下リハビリテーション学会の学会認定を取得した専門的な知識、技術、態度のもとにリハビリテーション医療を提供しています。食べることでお困りの方は、「摂食嚥下リハビリテーション外来」にご相談ください。

■日本大学松戸歯学部付属病院 「摂食嚥下リハビリテーション外来」☏047・360・9661。

食形態の指導
哺乳練習
捕食練習
高齢者の口唇訓練