DRリポート211回 

医療最前線Drリポート

歯周病とその治療

日本大学松戸歯学部長 歯周治療学講座教授

小方賴昌先生

日本大学松戸歯学部長 小方賴昌先生

 明けましておめでとうございます。昨年、日本大学松戸歯学部は創設50周年を迎えました。50周年記念事業として、付属病院と食堂・体育館棟との間に新校舎の建設が本年2月から始まります。工事中は、皆様にはご迷惑をおかけしますが、約2年で完成予定ですので、どうぞよろしくお願いいたします。

自覚症状が乏しい歯周病

歯周病は細菌(デンタルプラーク)、環境(ストレス、喫煙等)、全身疾患等がリスク因子となり、発症・進行する炎症性疾患です。歯を失う原因の1位は歯周病(37%)であり、歯周病罹患率は、15∼24歳で20%、25∼34歳で30%、35∼44歳で40%、45∼54歳で50%、55歳以上で55∼60%であり、45歳以上では罹患率が過半数を超えます。

 歯周病は、進行の過程で痛みがあまり無く、自覚症状が少ないため、歯と歯肉の境界から膿が出たり、歯が動揺して噛めなくなって気がついた時には、すでに手遅れで、歯を抜かなければならないほど、進行している場合があるため、予防はもちろん、早期発見・治療が重要です。

歯周病のリスク因子

歯周病治療の進歩と歯ブラシの重要性

 歯周病の治療は以前は、歯石が沈着したら歯石を除去する、歯肉が腫れたら切開し投薬する等の、症状を軽減するための対症療法がメインでした。しかし、デンタルプラークを除去するための歯ブラシ指導、禁煙指導、全身疾患の治療等、歯周病のリスク因子を少なくする、原因除去療法が主な治療法となり、歯周病が治る様になりました。

歯周病治療のスタートは

 医療面接を行い、主訴および病歴の聞き取り、患者への説明やモチベーション向上のための情報提供を行います。口腔衛生状態、歯周組織の炎症および破壊程度の把握のために、歯周病検査(歯の動揺度、プロービングポケット深さ、プロービング時の出血、歯と歯肉の境界のプラーク付着状態)とエックス線検査を行い、診断名を決め、治療計画を立案して、治療を進めます。

歯周病治療

歯肉に炎症が限局する場合を歯肉炎とよび、炎症が拡大し、歯槽骨吸収や歯根膜の破壊がある場合を歯周炎とよび、重症度によって軽度、中等度、重度に分類します。全ての歯周病治療で行う基本的治療を、歯周基本治療と呼び、デンタルプラーク除去のための口腔衛生指導(歯ブラシや歯間清掃用具の使い方)、歯石除去と歯根面の滑沢化(スケーリング・ルートプレーニング)、機械的歯面清掃(プロフェッショナルメカニカルトゥースクリーニング)、プラークが蓄積しやすい環境の改善、咬む力のコントロールを中心とした治療を行います。

治療効果の評価

歯周基本治療終了時に、1回目の歯周病検査と同じ検査(再評価検査)を行い、2回の検査結果を比較して、歯周病の改善度および治療効果を評価します。必要に応じて、歯周基本治療を繰り返し行い、治療後に歯周病検査を行うことで、治療効果を再評価することが重要です。

中等度以上の歯周炎の場合

歯周基本治療だけでなく、失われた歯周組織(骨、歯根膜、歯肉)を再生させる歯周外科治療が必要となります。歯と歯肉の境界を切開し、歯肉を剥離して、歯の周囲の骨欠損部の不良肉芽組織や歯石を綺麗に除去し、縫合する手術(フラップ手術)や、骨欠損部位に、歯周組織再生用材料を塗布する歯周組織再生療法も実施されています。

■日本大学松戸歯学部付属病院☎047~360~7111(コールセンター)。