歯科領域の慢性疼痛
日本大学松戸歯学部
歯科麻酔学講座教授 山口 秀紀先生
歯科麻酔学講座専任講師 下坂 典立(しもさか みちはる)先生
慢性疼痛とは
「慢性疼痛(まんせいとうつう」という言葉を耳にされることがあると思います。以前ははっきりとした定義がありませんでしたが、現在では「治療に要すると期待される時間の枠を超えて持続する痛み、あるいは進行性の非がん性疼痛に基づく痛み」と定義されています。
経時的には治療後や同じ痛みが3カ月~6カ月以上続く痛みが目安とされます。慢性疼痛ですが、かなり以前は「もう治ってますから様子をみましょう」、「これ以上の治療はありません」などと言われ積極的な治療が行われなかったり、漫然と痛み止めの処方が続いたりということもありました。しかし、現在では「慢性疼痛の分類」が発表され、治療方法もある程度確立しています。
歯科領域の慢性疼痛
歯科においても慢性疼痛は存在し、非歯原性歯痛(歯が原因ではないにも関わらず歯が痛い)、口腔内灼熱症候群(口の粘膜や舌に異常はないのに粘膜や舌が痛い)、神経障害性疼痛(歯科治療が終わったにも関わらず歯や顎が痛い)などが挙げられます。
また、歯や顎の痛みが顎を動かす筋肉の慢性疼痛が原因であったり、顎の痛みが実は頭痛であったりと多種多様です。治療はケースバイケースですが、薬物療法や理学療法(マッサージやストレッチ)で症状が緩和します。当付属病院では「口・顔・頭の痛み外来」で医師と歯科医師が診察にあたり最善の治療方針を決定します。
神経ブロック治療
疼痛でお困りの期間が長いと、疼痛部の血流が悪くなったり、身体のバランスを調整している自律神経が不調になったりすることもあります。そういった場合には神経ブロックという注射による治療が有効です。
歯科で行う神経ブロックには「星状神経節ブロック」があり、首に注射をすることによって血流と自律神経の不調を改善します。「首に注射!」と驚かれる方がほとんどですが、神経ブロック治療開始後に「怖さ」や「注射の痛み」で継続治療を断念された方はおりません。
慢性疼痛は経過が長い分、治療方針の決定や寛解・治癒にもある程度の期間が必要です。稀ではありますが精査の結果、別の疾患がみつかる事もあります。歯、顎、舌、口の中の痛みで長くお困りの方は、本学付属病院の「口・顔・頭の痛み外来」にご相談ください。最善の治療方針をみつけましょう。
■日本大学松戸歯学部付属病院☎047・360・7111(コールセンター)。