「治療中でも、自分らしく」コミックエッセイ「乳癌日記」著者 夢野かつきさんにインタビュー

東葛まいにち

〈プロフィール〉 千葉県出身。1975年生まれ。1989年から同人誌活動を続け、2015年に40歳で乳癌になったことをきっかけに「乳癌日記」の執筆を始める。女性特有癌サイトPeer Ring「ピアリング」でライターとしても活動している。

「漫画を描くことが治療を続ける励みになりました」
と話す夢野さん

―夢野さんにとっては初めての商業誌なんですよね

 そうなんです。同人誌で乳癌日記を描いている時点で「ちゃんとした本として出版したい」という気持ちが出てきて、描きあがったら出版社に持ち込みしようと考えていた所、同人誌即売会で編集者の方から声をかけて頂き、出版することになりました。運が良かったです!

―執筆にあたり、気を付けていたことはありますか

 内容は「出来るだけ赤裸々に」描こうと心がけました。本来聞きづらいようなこと、隠しておきたいようなことまで詳細に描きました。それが一番自分の知りたいことであり、他の患者さんも同じ気持ちだと思ったからです。治療していた当時の膨大な日記を参考に、辛かったこと、悲しかったこと、嬉しかったことや励ましてもらった記憶をひとつひとつ丁寧に掘り起こしました。

―苦労した点は

 主治医で監修もしてくださった榊原淳太先生(千葉大学医学部付属病院ブレストセンター)の説明を、どうやってわかりやすく描くかという点が一番苦労しました。もちろん先生はわかりやすいように説明してくれますが、それを自分の中できちんと解釈できているか、絵で表現できるのか、どう描いたら相手に伝わるかを考えながら描いていました。

―出版後の周囲の反応は

 「本を読んで不安が減った」「この先どんな治療をするのかがある程度わかって安心した」などの感想を頂いて、とても嬉しく思っています。描いた甲斐があったなぁと思います。あと、友人や家族が本当に喜んでくれています。

―読者の方へメッセージ

 がんって死につながるイメージが強いし、告知されたら不安でいっぱいだと思うんです。そんな時にこの本を読んで、これから何が起きるかわかるだけでも不安は減ると思いますし『案外治療中も楽しそうだぞ?』って思ってもらえたら嬉しいです。 治療はもちろん大変ですし辛いこともありますが、普段通りに自分が好きなことを楽しんでほしいです。必要以上に不安になりすぎないでくださいね。 

ー夢野さんは千葉県のご出身ですよね。千葉でおすすめの場所を教えてください!

 近、船橋駅のすぐ近くにOnce upon a time(ワンスアポンアタイム)という中世北欧風の創作居酒屋さんができまして、ここが大変お気に入りです。小さなお店なんですけど、ロード・オブ・ザ・リングやムーミンみたいな内装とお料理で、あちこちに妖精さんがいたり壁に羊皮風の品書きや剣が置いてあったり。お店のご主人が以前はイクスピアリで働いていたビアソムリエの資格持ちさんだそうで、地ビールに結構力を入れられてたりするんですけど、個人的に「ミード酒」っていう蜂蜜のお酒をおススメしたいです。結構珍しいお酒だと思うんですけどこれが20種類以上も置いてありまして、甘くて飲みやすいんですけどそれぞれ飲み比べてみるとこれが全然違うんですよ。お料理もお酒もとても楽しくて美味しいお店でおススメです!

他にも、富津岬の展望台や調子の犬吠埼、佐原の大祭(さわらのたいさい)や鋸山、アンデルセン公園や木更津航空祭。千葉って気になるところがたくさんあって楽しいですよね!千葉市動物公園が近所にあるので今年は年パス買ってて、お散歩がてら遊びに行ったりもしてました。

-ありがとうございました!

 著者の夢野さんはとても明るくハキハキとインタビューに答えてくださいました!乳癌日記」は本当に痒い所に手が届くような本です。診察時に「本当は気になるけど先生も忙しそうだし、こんなこと聞いたら怒られるかな」と考えてしまって結局聞きたいことを聞けなかった、という経験がある方も多いと思います(私もそうです)が、この本では夢野さんが「わからないことは全部聞く!」というスタイルで、小気味よく先生に質問をぶつけています。対する榊原先生も、丁寧かつ簡潔に答えを下さってます。そんなお二人のコミュニケーションも読みどころのひとつかと思います。闘病記は数あれど、こんなに面白く読める本はなかなかないのではないかと思います。

(取材=松原美穂子)