DRリポート214回 

ふれあい毎日連載

歯科的見地から「COVID-19」感染と免疫・予防①

日本大学松戸歯学部 感染免疫学教授  泉福 英信先生 

口の感染症の制御が大切

口は、食物摂取による栄養補給、会話など人々のコミュニケーションなどに使われ、人が楽しく生きていために必須な器官です。

しかし、栄養補給にしてもコミュニケーションにしても、感染の入り口および出口として感染症の発症に関わってきます。すなわち、口の感染の制御が重要です。特にCOVID-19(新型コロナウイルス)などの感染症は、口からウイルスの含まれた飛沫が飛び出して、ヒトへ感染が広がります。

口の中の健康を維持することは、感染症に対してプラスに働くことは間違いありません。口の感染症の制御という観点から3回にわたって、ヒトの健康を考察していきたいと思います。

COVID-19(新型コロナウイルス)の感染

鼻腔や咽頭に加えて、唾液腺や口の中の粘膜細胞にSARS-CoV-2が感染することが分かっています(図)。唾液検査により感染が分かることからも唾液中にウイルスがいることが明らかです。

しかし、口の中には唾液が分泌されていて、その唾液に含まれた抗ウイルス抗体の作用によってウイルス感染を抑える効果もあります(図)。唾液をしっかりと出すことは、ウイルスを制御することにもつながります。

食事の際は、飛沫が出ないように注意して、顎を動かして唾液を出して食事をすることが大切です。

COVID-19の重症化と口の中の疾患

 COVID-19の重症化は心疾患、糖尿病や脳血管障害など基礎疾患を有する人で高まることが明らかとなっています。歯周病は、これらの基礎疾患の発症と関連性があることが報告されています。

したがって、歯周病を治療および予防することで間接的にCOVID-19の重症化を予防することに繋がると考えます。歯周病を治療することで美味しく食事もできることになり、免疫力が高まり、感染症に対する抵抗力も高まります。COVID-19のパンデミックに打ち勝っていく方法の一つとして、口の中の健康維持は重要であると考えます。

口の中の健康維持

 う蝕、歯周病の発症を抑えるために毎日の口腔清掃が大切です。歯の表面には、バイオフィルムという粘着性の菌の凝集体が付着しています。しっかりと歯ブラシでバイオフィルムを除去することが大切です。

次回はこのバイオフィルムについて紹介します。

■日本大学松戸歯学部庶務課☎047・360・9567。