生涯にわたるお口の健康を管理しましょう
その2 ―お口の健康と機能を調べる検査 ―
日本大学松戸歯学部 付属病院長
有床義歯補綴学講座教授 河相 安彦先生
前号の記事で高齢期のオーラルフレイルやフレイルを防ぐには、子どものころから、一生涯かけてしっかりとお口の健康を維持することと、お口の病気を持った時は治療し、予防を続けることが重要だと述べました。
お口の機能は、食事を味わう味覚、噛んで細かくする咀嚼、唾液と合わせて食事を飲み込む嚥下の他に、発音などの働きが複合して成り立っています。お口の機能は次の①~⑦の検査で、総合的に判定します。
①お口の汚れ
舌が汚れると唾液の細菌数が増えるため、誤嚥性肺炎などにつながるリスクを検査します。検査は舌の汚れ度合いを歯科医師が観察して評価します。
②お口の乾燥
お口の乾燥が進むと、食事が円滑にできない、入れ歯の痛みが続くことがあります。このような、状態を口腔水分計という機械を用いて評価します。
③咬合力(=噛み込む力)の低下
噛み込む力が弱くなると野菜や果物、食物繊維の摂取量が少なくなるという報告があります。噛み込む力は、専用の感圧フィルムと分析機器を用いて計測し評価します。
④お口の運動機能の低下
おしゃべりや、咀嚼や飲み込みに必要な、舌や唇の機能を検査します。検査は単音節(パ・タ・カ)の発音速度を計測し、「パ」、「タ」、「カ」の
5 秒間での発音回数を評価します。
⑤舌の力の低下
舌の筋力低下によって、咀嚼、嚥下や発音した時に舌と上あごに舌を押し付ける圧力が低下すると、健常な咀嚼や食塊形成に支障が生じます。検査は専用の舌圧測定器(写真)を用いて舌圧の最大値を計測し評価します。
⑥咀嚼機能の低下
噛めない食品が増加し、低栄養を引き起こす恐れを検査します。検査はグミゼリーを咀嚼して、どのぐらい細かく砕けたか、またはグミゼリーに含まれる糖分がどのぐらいお口に溶け出したかを計測して評価します。
⑦飲み込み機能の低下
主に飲み込みの機能を検査します。検査は簡単な質問票を用い、回答した項目の、合計点から評価します。
いずれの検査も痛みはなく、短時間で行えます。これらの検査(=物差し)により患者さん、歯科医師双方にとって「お口の機能の見える化」が可能となりました。そして、検査結果に基づき、お口の機能の改善や維持に対して、根拠に基づく治療が可能となりました。
日本大学松戸歯学部付属病院では、今年4月より「口腔機能検査外来」を設置する予定です。ご紹介した検査は年齢によって、保険が適応になります。ご希望の方はご相談ください。次回は、検査の結果、お口の機能の改善が必要になった時の治療や対応法について触れていきます。
■日本大学松戸歯学部庶務課
☎047・360・9567