ふれあいあごら

ふれあい あごら

土と野菜と腸内細菌

ご近所さんから時々野菜をいただく。「おばさんの野菜なら食べるよ!」と食卓に苦手な野菜があるのを発見して、娘が言う。その野菜畑は、うちのすぐ裏手にあって、時々収穫もさせてもらう。実感があるだけに、同じ野菜でも、買ってきたものとは違うのだ。

 畑に入ると、土の匂いがする。野菜や土には、様々な生き物が棲んでいる。娘は土も畑の虫たちも大好きだ。一度はナメクジを飼ったこともあるくらいだ。

 そして、その「土」の中には、腸内細菌と同種の細菌がいるらしい。土中の細菌で有名なのが、食中毒を起こすボツリヌス菌やウェルシュ菌などである。しかし、土中の細菌で食中毒を起こすものは、実はそんなに多くはないようだ。それどころか、人間を助けてくれる腸内細菌がたくさん棲んでいるという。

農業に従事する人には、アレルギー疾患が少ないらしい。これは、土や家畜などから、知らぬ間に多くの腸内細菌を取り込み、結果、腸内の細菌の種類が増えることで、アレルギーを防ぐ細胞を鍛えることが出来るからだと言われている。

普段の生活の中でも私たちは、舞い上がった土埃を吸い込むことなどで、知らず知らずのうちに土中の腸内細菌を体内に取り込んでいるらしい。腸内細菌は、脳で働くセロトニンやドーパミンという物質にも作用しているというのだから驚きだ。

自然や土が豊かで、多種多様な生き物が生息している大地がそこにあれば、心も身体も豊かに過ごすことが出来るのだ。

「おばさんの野菜はやっぱりおいしいね」と、

ぱくぱくと野菜を食べる娘の健全な姿を見ると、私たちの身体は、確かに地球と繋がっているのだと実感する。

虫も細菌も、たくさん棲むことのできる豊かな土を守り育ててくれている地球上のあらゆる業種の人々、虫や動物たち、樹や草や水、そしてそこに生息する細菌たちに、日々感謝する毎日である。(八千代市 Y・F)

⚫参考図書

『腸内細菌が家出する日』 藤田紘一郎著

三五館 2016年

『NHK こころをよむ腸内細菌のチカラ―心と体を健やかに』藤田紘一郎著 NHK出版 2020年